高校二年生の伊澄潔乃は、八年前、木蘇円窟神社の祭りの最中に行方不明となったことがあった。不思議な場所へ迷い込んだ彼女を救ったのは、焚き火のように燻る大きな黒い狐。潔乃は彼を「神様」と呼び、その姿を探し続けていた。
五月のある日、潔乃は授業中に意識を失い、奇妙な空間に引き込まれる。そこで凶暴な猿の群れに襲われるが、八年前と同じ黒い狐――玄狐が彼女を助けに現れる。彼は炎を纏い人間の姿へと変わった。その正体は、同じクラスの男子生徒、八柳彦一だった。
これは、一人の少女の魂を巡る、愛と赦しの物語。
文字数 172,164
最終更新日 2025.01.05
登録日 2025.01.05