『ラズーン』第一部 9.シェーランの山賊(コール)(1)アップ。
だが、その思いが諸刃の剣であることにも気がついた。
アシャもまた、全うすべき仕事を全うせずにラズーンを離れた者だ、それが遠く遥かな場所でユーナ・セレディスという少女を生死の境に追い詰めていることも知らずに。
そしてそれは、今こうして、故郷を同じくする者とやりとりしている間に、ユーノが修羅場の中に置き去られているのと同じことでもある。
(俺に、その資格はある、のか?)
ユーノを腕に抱き締める、資格が。
「ちっ」
思った瞬間に胸を過った傷みに忌々しく舌打ちして急ぎ家の中に戻ったが、中ではほとんど始末がついてしまっている。
「アシャ! どこ行ってたんだ!」
すばやく見咎めたイルファがむくれる。
「1人だけ楽してやがったな!」
「外の敵を確かめてたんだろうが」
「ほんとか?」
「う」
イルファだけではない、レスファートの微妙な視線に思わず口ごもるアシャの前でぱちん、と音を立てて剣を片付けたユーノがちらっと見遣ってくる、その視線が一番堪えた。
「俺だってな、」
「お願いですっ!」
思わず弁解しようとした矢先、家の隅で震えていた主人ががばりと床に両手をつく。
「は?」
「山賊(コール)をやっつけてもらえないでしょうか!」
「え」
「お願いします! お願いします! お願いします!」
ぎょっとするアシャ達に主人はひたすら喚き続けた。
アシャもまた、全うすべき仕事を全うせずにラズーンを離れた者だ、それが遠く遥かな場所でユーナ・セレディスという少女を生死の境に追い詰めていることも知らずに。
そしてそれは、今こうして、故郷を同じくする者とやりとりしている間に、ユーノが修羅場の中に置き去られているのと同じことでもある。
(俺に、その資格はある、のか?)
ユーノを腕に抱き締める、資格が。
「ちっ」
思った瞬間に胸を過った傷みに忌々しく舌打ちして急ぎ家の中に戻ったが、中ではほとんど始末がついてしまっている。
「アシャ! どこ行ってたんだ!」
すばやく見咎めたイルファがむくれる。
「1人だけ楽してやがったな!」
「外の敵を確かめてたんだろうが」
「ほんとか?」
「う」
イルファだけではない、レスファートの微妙な視線に思わず口ごもるアシャの前でぱちん、と音を立てて剣を片付けたユーノがちらっと見遣ってくる、その視線が一番堪えた。
「俺だってな、」
「お願いですっ!」
思わず弁解しようとした矢先、家の隅で震えていた主人ががばりと床に両手をつく。
「は?」
「山賊(コール)をやっつけてもらえないでしょうか!」
「え」
「お願いします! お願いします! お願いします!」
ぎょっとするアシャ達に主人はひたすら喚き続けた。
コメント 0件
登録日 2017.02.10 22:08
0
件
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。