妹ばかり~ 5章29話没話(1)
供養
◆◆◆
・公爵視点
濃い魔力の香りに、ヴォルフは鼻を鳴らした。
震動と悲鳴。
それからこの魔力で、だいたいなにが起きているのか察しがつく。
おそらく、アーシャの魔力が暴走でもしているのだろう。
最初に見たときよりも、なお状況は悪そうだ。
安定し始めていたのに、誰かが余計なことをしたのか。
まだ本調子ではない体では、これだけの魔力を放ち続けて無事で済むとは思えない。
――まあ、俺には関係ないことだ。
たいした関心も寄せず、ヴォルフは内心でそうつぶやく。
本物のアーシャがどうなろうと、彼の知ったことではない。
彼女の望み通り、アーシャの保護はした。
食事と寝床を与えて、魔力を抑えつけ、安定するようにしてやった。
傍には医者を付け、面倒を見るように言いつけた。
十分すぎるほど世話は焼いたつもりだ。
それ以上に手を掛ける気はないし、問題が起きたから手を貸してやるつもりもない。
それよりも、今は彼女の方がよほど重要だった。
部屋に流れ込む彼女に似た甘い魔力の香りが、彼の心を酔わせていく。
――心地よい。
まるで彼女の血を見ているようだ。
目の前で逃げ出そうとする彼女の腕を掴みながら、ヴォルフは目を細める。
ヴォルフが目の前に居ながら、どこへ行くつもりでいるのか。
「放っておけ」
「ほ、放っておけと言われましても……」
「君が気にするようなことじゃない」
今の彼女に必要なのはヴォルフだけだ。
甘い香りの中で、浮かれた心が独占欲をあらわにする。
ベッドで他人の名を聞くなど、同性でも家族でも不愉快だ。
「俺たちには関係のないことだ」
背後から抱き寄せ、忘れさせるつもりで首筋に口づける。
顔をうずめ、頭を擦りつけながら、舐めて、吸って――。
――美味そうだな。
欲望のままに噛みついた。
◆◆◆
・公爵視点
濃い魔力の香りに、ヴォルフは鼻を鳴らした。
震動と悲鳴。
それからこの魔力で、だいたいなにが起きているのか察しがつく。
おそらく、アーシャの魔力が暴走でもしているのだろう。
最初に見たときよりも、なお状況は悪そうだ。
安定し始めていたのに、誰かが余計なことをしたのか。
まだ本調子ではない体では、これだけの魔力を放ち続けて無事で済むとは思えない。
――まあ、俺には関係ないことだ。
たいした関心も寄せず、ヴォルフは内心でそうつぶやく。
本物のアーシャがどうなろうと、彼の知ったことではない。
彼女の望み通り、アーシャの保護はした。
食事と寝床を与えて、魔力を抑えつけ、安定するようにしてやった。
傍には医者を付け、面倒を見るように言いつけた。
十分すぎるほど世話は焼いたつもりだ。
それ以上に手を掛ける気はないし、問題が起きたから手を貸してやるつもりもない。
それよりも、今は彼女の方がよほど重要だった。
部屋に流れ込む彼女に似た甘い魔力の香りが、彼の心を酔わせていく。
――心地よい。
まるで彼女の血を見ているようだ。
目の前で逃げ出そうとする彼女の腕を掴みながら、ヴォルフは目を細める。
ヴォルフが目の前に居ながら、どこへ行くつもりでいるのか。
「放っておけ」
「ほ、放っておけと言われましても……」
「君が気にするようなことじゃない」
今の彼女に必要なのはヴォルフだけだ。
甘い香りの中で、浮かれた心が独占欲をあらわにする。
ベッドで他人の名を聞くなど、同性でも家族でも不愉快だ。
「俺たちには関係のないことだ」
背後から抱き寄せ、忘れさせるつもりで首筋に口づける。
顔をうずめ、頭を擦りつけながら、舐めて、吸って――。
――美味そうだな。
欲望のままに噛みついた。
コメント 0件
登録日 2020.01.23 21:29
0
件
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。