segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『ラズーン』第一部 9.シェーランの山賊(コール)(7)(個人サイトでアップ)

「で、何がおかしい気配だと思ったって?」
「ああ」
 アシャが睨んでいた視線を微かに逸らせる。
「……あいつらとは前にやりあったことがある」
「あるの?」
「まあな」
 まあな、だって?
 ユーノは密かに眉をしかめる。
 確かにアシャという男が見かけと全く違うものだというのはわかってきた。優男で女に見えかねない綺麗な顔で、詩歌も口にしダンスもうまい、宮廷慣れもしている、物腰も雰囲気も柔らかいが、その実敵を倒すときの容赦なさ、年齢にしては異常に豊富な知識と経験、しかも時々見せる不思議な微笑には得体の知れないものもあって。
 レクスファで『盗賊王』を倒したとも聞いた、なのにここでも『山賊(コール)』とやりあったことがあるという。どう見ても生死を左右する修羅場を事もなくくぐり抜けてきているようなのに、ただの旅人がそれほどのことに巻き込まれて平然と生きてこれるのだろうか。
 そもそも、アシャはどこの生まれで、本当は何者なのか、それをユーノはおろか、レスファートもイルファも、いやレダト王さえ詳しく知らない。知らないままに、誰もがアシャを身内深く迎え入れる、それが既に十分不思議なことではないのか。
(まさか)
 ちら、とユーノは横目でアシャを見遣る。
(それこそ、妖魔とか精霊とか………ラズーンの神さま、だとか)
 まさかね、と思いながら唇を噛む。
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登録日 2017.02.04 23:01

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