segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『ラズーン』第一部 9.シェーランの山賊(コール)(6)(個人サイトでアップ)

「生贄?」
「はい…実はこんなに山賊(コール)を恐れている理由というのは、『生贄』のせいなのです」
 荒らされた家を片付け、山賊(コール)達の屍体を荷車や馬で村外れの墓地まで運び、ようやく何とか落ち着いたころ、主人はぽつりぽつりと話し出した。
 『鳴く山(コール)』が低い地鳴りに加えて女の悲鳴のような叫びを上げる時、いつの頃からか、山賊が街を襲うようになった。
 やり方はそれまでと全く違う。一番に盗んでいくはずの貴金属や食物などには目もくれず、ただただ村を破壊し女を攫っていく。人々が娘や妻を隠し始めると、山賊はより荒れ狂い連日連夜襲撃を続けた。やがて、人々が山賊をコールと呼んで恐怖に恐れ戦くようになったころ、彼等は『生贄』を命じた。
 『鳴く山(コール)』が女の悲鳴で呼び掛けるとき、くじで選ばれた娘は泣く泣く家族に別れを告げ、山に向かう。そうすれば村はそれ以上襲われず、『生贄』は1人で済む。もし、『生贄』が準備されていなければ、山賊(コール)は村を襲い、襲った家の数だけ『生贄』を差し出さなくては再び村が襲われる。
 その夜、襲われた家は2軒、村は2人の『生贄』を用意しなくてはならない。
「『生贄』には未婚の若い娘でなくてはならないのです。しかし、もう村には娘など残っておりません……私どもの娘も………この前……」
 主人は膝の上で固く拳を握りしめた。
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登録日 2017.02.03 19:09

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