『ラズーン』第一部 9.シェーランの山賊(コール)(5)(個人サイトでアップ)
ミネルバは手綱から手を離し、足下に転がっている男の屍体に向かって指で招いた。ふわ、と重さのないもののように浮かんだそれを、くすくす笑いながら白馬の背に引き寄せる。
『これはもらっておこう。騒ぎを起こすのは好まぬ。いくら支配下(ロダ)とはいえ、こんな死に方では冗談にもできぬしな』
「……このあたりに『運命(リマイン)』は居たのか、ミネルバ?」
『それを知ってどうする』
ミネルバが間髪入れずに問い返し、アシャは口を噤んだ。
『己の運命に立ち向かう気になったのか、アシャ』
「……」
『気持ちも定まらぬのに、敵の所在を確かめても仕方なかろう。それとも…』
微かに微かに柔らかな微笑みの気配が滲む。
『あの娘のために、命を賭ける、か?』
(ユーノの、ために?)
もう一度家の中を振り返る。飛び散る汗に紅潮した頬、鋭い視線は闘志を失っていない。
「……彼女に俺は必要じゃない」
『く……くく』
ミネルバが失笑した。
『必要とされないのがそれほど苦痛か、ラズーンのアシャ?』
「っ」
『それこそ……』
『これはもらっておこう。騒ぎを起こすのは好まぬ。いくら支配下(ロダ)とはいえ、こんな死に方では冗談にもできぬしな』
「……このあたりに『運命(リマイン)』は居たのか、ミネルバ?」
『それを知ってどうする』
ミネルバが間髪入れずに問い返し、アシャは口を噤んだ。
『己の運命に立ち向かう気になったのか、アシャ』
「……」
『気持ちも定まらぬのに、敵の所在を確かめても仕方なかろう。それとも…』
微かに微かに柔らかな微笑みの気配が滲む。
『あの娘のために、命を賭ける、か?』
(ユーノの、ために?)
もう一度家の中を振り返る。飛び散る汗に紅潮した頬、鋭い視線は闘志を失っていない。
「……彼女に俺は必要じゃない」
『く……くく』
ミネルバが失笑した。
『必要とされないのがそれほど苦痛か、ラズーンのアシャ?』
「っ」
『それこそ……』
コメント 0件
登録日 2017.02.02 19:59
0
件
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。