segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『朱の狩人』3.『印怒羅』(1)アップ

 もう一人の自分がいる。
 この世に産まれ、力に目覚め友を得、それでも埋め切れない孤独の中に、そのことばだけが浮かび上がる。
 もう一人の自分が……自分と同じ力の持ち主が。
 灯もつけない部屋、ベッドに横たわって天井を見上げたまま、仁は手探りで煙草の箱を探した。内田が吸っているのと同じラッキーストライク、慣れない手付きで1本抜き出し銜える。しばらく火をつけずにぼうっとしていたが、緩やかに瞬きしてから眉をしかめ、再び危うい仕草でライターを取り出し、吸い込みながら火をつけた。
「ごふっ! ごほっ!! ごっ……ほっ……!」
 むせて跳ね起きる。吹き出して唇から飛んだ煙草を追いかけた指が、凍りついたように強ばって止まる。
 煙草が宙に浮いていた。
 見えない手で支えられてでもいるように、跳ね起きた仁の鼻先で揺れもせず。
 そろそろと指を伸ばし、煙草に触れるや否や慌てて見えない手から奪い取る。
「こふっ……」
 小さく咳き込んだ口をもう片方の手の甲で押さえ、唇を噛む。
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登録日 2017.01.23 23:42

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