『ラズーン』第一部 8.『太陽の池』(5)(個人サイトでアップ)
水を汲もうと泉を覗き込んだアシャは水面に映った自分の姿を見つめた。灯火もないのに、水面の暗い鏡にアシャの姿はくっきりと浮かび上がっている。よく見るとそれは、体の周囲をゆらゆらと包む、陽炎のような淡い靄のせいだとわかる。
靄は霞み揺らぎながら、やがて寄り集まって形を作った。左右に伸びて羽ばたく猛禽類の翼のように、頭の周囲に濃く集まって光り輝く王冠のように、幾重にも体を覆って豪奢なマントのように、周囲へ飛び離れて全身を猛々しく研ぎすまされた剣で飾るように、腰から下に寄り集まって担ぎ上げる台座のように。やがて見つめる視線に気付いたように緩やかに解け、元通り薄く淡く体を包む。
誰を巻き込むわけにもいかない。
いつかのユーノの思いは、アシャにもまた近しいもので。
「…」
唇を噛み締めてそれら1つ1つを凝視していたアシャは、背後に動いた気配に足を滑らせ小石を泉に落とした。ぼちゃんと音がして水鏡が乱れると同時に、剣に手をかけ振り返る。
木々の隙間を翻るような黒い影が一瞬見えた気がしたが、すでに気配はない。刺客にしては素早すぎる動きだ。少し待ったが、辺りは静まり返って再び戻ってくる様子もない。
(過敏になりすぎているのか?)
靄は霞み揺らぎながら、やがて寄り集まって形を作った。左右に伸びて羽ばたく猛禽類の翼のように、頭の周囲に濃く集まって光り輝く王冠のように、幾重にも体を覆って豪奢なマントのように、周囲へ飛び離れて全身を猛々しく研ぎすまされた剣で飾るように、腰から下に寄り集まって担ぎ上げる台座のように。やがて見つめる視線に気付いたように緩やかに解け、元通り薄く淡く体を包む。
誰を巻き込むわけにもいかない。
いつかのユーノの思いは、アシャにもまた近しいもので。
「…」
唇を噛み締めてそれら1つ1つを凝視していたアシャは、背後に動いた気配に足を滑らせ小石を泉に落とした。ぼちゃんと音がして水鏡が乱れると同時に、剣に手をかけ振り返る。
木々の隙間を翻るような黒い影が一瞬見えた気がしたが、すでに気配はない。刺客にしては素早すぎる動きだ。少し待ったが、辺りは静まり返って再び戻ってくる様子もない。
(過敏になりすぎているのか?)
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登録日 2017.01.23 23:33
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