『桜の護王』10.直面(ひためん)(8)
(これはいけない)
声は哀れみを込めて繰り返す。
(助けるつもりであったのに……これではそなたを追い詰めるばかりか)
誰?
問いかけた自分の声にいきなり視界が幾重にも重なる映像で溢れる。
降りしきる桜。泣きじゃくる小さな子ども。臨終の床に泣き崩れる少年。ひんやりとした夏の川べりですがりつく姿。入り組んだ街を、村を、闇を、日射しの中を、洋子を探してひたすらに歩く護王の姿。
(よかれと思ってしたことなれど、我が転生はそなたを縛る鎖となった)
どうすればよいのだろう、と声と一緒に洋子は戸惑った。
このままでは護王は洋子に縛られて、未来永劫身動き取れない。洋子の転生を待ち望むだけに自分の一生を使い果たしてしまうのは火を見るよりも明らかで。
「姫…さん…」
洋子が部屋を出ていかないのに僅かに安心したのだろう、護王はそれでも震えながら手を伸ばしてきた。そのままそっと触れてくる、幻にでも近づくように。
その幻にさえ、縋るように。
声は哀れみを込めて繰り返す。
(助けるつもりであったのに……これではそなたを追い詰めるばかりか)
誰?
問いかけた自分の声にいきなり視界が幾重にも重なる映像で溢れる。
降りしきる桜。泣きじゃくる小さな子ども。臨終の床に泣き崩れる少年。ひんやりとした夏の川べりですがりつく姿。入り組んだ街を、村を、闇を、日射しの中を、洋子を探してひたすらに歩く護王の姿。
(よかれと思ってしたことなれど、我が転生はそなたを縛る鎖となった)
どうすればよいのだろう、と声と一緒に洋子は戸惑った。
このままでは護王は洋子に縛られて、未来永劫身動き取れない。洋子の転生を待ち望むだけに自分の一生を使い果たしてしまうのは火を見るよりも明らかで。
「姫…さん…」
洋子が部屋を出ていかないのに僅かに安心したのだろう、護王はそれでも震えながら手を伸ばしてきた。そのままそっと触れてくる、幻にでも近づくように。
その幻にさえ、縋るように。
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登録日 2016.09.09 23:16
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