『未来を負うもの』7.闇からの声(2)アップ。
よくわからない、と言った顔をさとるは無理に拵えた。その体を、仁は軽く叩いた。
「行こう、さとる」
「わかった」
さとるが意識を集中し始めた。仁も、見えない視界に伸びた道に自分の意識を走らせる。
ぶうん、と周囲が振動した。世界を構成する細かな粒子が揺れ動く。粒子が激しく動き回ることで、固定されていると思われた空間が歪み変形し、繋がりまた切れる。
仁とさとるの回りで世界は不定形な粘液となって流れ去り過ぎ去り、再び構成される。
(これが『飛ぶ』ということなのか)
仁にとっては、世界の中を移動すると言うよりは、世界がいったん溶け崩れて渾沌となり、そこから自分達だけが隔離されているという感じだ。
仁にしがみついているさとるは、腕の力とはそぐわない大人びた顔で、周囲の混沌を眺めている。目は見開いているけれど何も映っていないのかもしれない、そう思わせるような、平然とした顔だ。
(こんなものをずっと小さなころから見ているとしたら。世界は決まった形などなくて、いつでも何にでも変わるのだと思ってきたのだとしたら)
仁はさとるの不安を感じた。
「行こう、さとる」
「わかった」
さとるが意識を集中し始めた。仁も、見えない視界に伸びた道に自分の意識を走らせる。
ぶうん、と周囲が振動した。世界を構成する細かな粒子が揺れ動く。粒子が激しく動き回ることで、固定されていると思われた空間が歪み変形し、繋がりまた切れる。
仁とさとるの回りで世界は不定形な粘液となって流れ去り過ぎ去り、再び構成される。
(これが『飛ぶ』ということなのか)
仁にとっては、世界の中を移動すると言うよりは、世界がいったん溶け崩れて渾沌となり、そこから自分達だけが隔離されているという感じだ。
仁にしがみついているさとるは、腕の力とはそぐわない大人びた顔で、周囲の混沌を眺めている。目は見開いているけれど何も映っていないのかもしれない、そう思わせるような、平然とした顔だ。
(こんなものをずっと小さなころから見ているとしたら。世界は決まった形などなくて、いつでも何にでも変わるのだと思ってきたのだとしたら)
仁はさとるの不安を感じた。
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登録日 2017.01.11 01:24
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