『未来を負うもの』6.運命(さだめ)に二人(1)アップ。
仁は家に戻った。
汗と汚物で体中が腐っていきそうな気がして、シャワーを浴び、制服を着替える。
汚れ切った洗濯物は、少しためらった後ポリ袋に入れて口を固く縛り、ゴミバケツに放り込んだ。帰ってきた母親が騒ぎそうな気はしたが、今の仁には、もう一度登校するということさえ、夢で見た話のようにあやふやなものになっている。
濡れた髪の毛を拭きながら風呂場から出てくると、家の中は静まり返っていた。いつものように、何の変わりもなく、穏やかに。
豊が読みかけていたのだろうか、居間のテーブルの上に広げた新聞がのせられている。
仁はそのぽっかりと虚ろな光景にしばらくじっと目を据えていた。
職場から直接豊を迎えに行った母親は、豊が学校に向かったことを知るだろう。仁に会いに行ったのだと察して苛立ちはするだろうが、それなりに納得して家に戻ってくるだろう。息子と共に家で待っているだろう、再び家族として暮らせる夫の姿を期待して。
だが、浅葱豊は、再びいなくなってしまったのだ。
いや、家どころか、もうこの世界のどこにもいないのだ。
汗と汚物で体中が腐っていきそうな気がして、シャワーを浴び、制服を着替える。
汚れ切った洗濯物は、少しためらった後ポリ袋に入れて口を固く縛り、ゴミバケツに放り込んだ。帰ってきた母親が騒ぎそうな気はしたが、今の仁には、もう一度登校するということさえ、夢で見た話のようにあやふやなものになっている。
濡れた髪の毛を拭きながら風呂場から出てくると、家の中は静まり返っていた。いつものように、何の変わりもなく、穏やかに。
豊が読みかけていたのだろうか、居間のテーブルの上に広げた新聞がのせられている。
仁はそのぽっかりと虚ろな光景にしばらくじっと目を据えていた。
職場から直接豊を迎えに行った母親は、豊が学校に向かったことを知るだろう。仁に会いに行ったのだと察して苛立ちはするだろうが、それなりに納得して家に戻ってくるだろう。息子と共に家で待っているだろう、再び家族として暮らせる夫の姿を期待して。
だが、浅葱豊は、再びいなくなってしまったのだ。
いや、家どころか、もうこの世界のどこにもいないのだ。
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登録日 2017.01.07 00:26
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