『桜の護王』9.蒼(9)アップ。
「ちょっとお話があるんですが。日高のことで」
びくっ、と護王が背中から熱湯をかけられたように振り返った。一瞬外からの光に照らされた護王の目許に何か煌めくものが零れたと見えたが、洋子に背中を向けたままで障子を開ける護王の姿にたじろいだ気配はない。開かれた障子の向こうから、村上が部屋を覗き込んでくる。
「おや…お邪魔でしたか」
「なんのことや。変なこと言うて絡まんといてくれ」
言い捨てて護王は村上と入れ代わりに部屋を出て行きながら、
「姫さんを、誰がどうできる、言うねん」
嘲笑った。
「ええ加減に扱こうてくれるな、桜の姫やぞ」
「心得ているよ」
村上が平然と応じて護王は眉をしかめた。後はもう、洋子を振り向くことなく障子の向こうに姿を消した。
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登録日 2016.08.29 22:27
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