雨川 海(旧 つくね)

雨川 海(旧 つくね)

Amazon Kindle Unlimitedで出版活動をしています。SF、冒険活劇、時代小説など、色々なジャンルを書いています。 好きな作家 司馬遼太郎、伊坂幸太郎、Aデュマ、Oヘンリ、乙一他

貞子

 どうも、ツヨシです。

 僕とトモカちゃんは、新婚5年目の仲良しさんです。
 まだ子供はいませんが、#鎹__かすがい__#が要らない程のお友だち夫婦です。
 もっとも、子供が嫌いな訳ではありません。むしろ、大好きです。
 何故なら、二人の馴れ初めは、教会でキッズの世話をする係りを担当していたからです。

 外出は、職場に行く以外は一緒です。
 ただし、ベタベタはしません。さらりと前後で歩いたりします。僕は少し淋しいけど、トモカちゃんは速足で、脇目も振らず一目散のウォーキングマシンだから、とても追い付けません。

 貴女の背中を見守りながら歩きます。

♪夫は妻を慕いつつぅぅぅ。妻に寄り添う陰のようぅう。三歩下がって付いて行くぅぅぅ♪

 そんな心境です。


 さて、僕たちは、3LDK のアパートで暮らしています。自分で言うのも照れますなぁ。
 あっ、何に照れるか言っていない。それは当然、近所でも評判の仲の良さです。
 もう、11月22日に表彰されそうな良い夫婦です。いやぁ、照れる照れる。ムフフ。


 そんな僕らは、ある日の夕食後、テレビを観ながら話していました。
 僕は、愛しいトモカちゃんとコミュニケーションを取るため、テレビ画面からチョイスしたネタを振ります。

「オシドリって、仲の良い夫婦を表す場合に引用されるけど、毎年パートナーを代えるらしいね」

 僕らが観ていた番組は、仲が良いふりが上手い芸能人夫婦が旅する番組で、湖畔を歩くシーンでした。

「へぇ、ちっともオシドリじゃないね」

 トモカちゃんの返事が可笑しかったので、僕は彼女の方へ顔を向けます。

「いや、オシドリはオシドリ……」

 僕は、予想外な展開に絶句します。なんと、愛しいトモカちゃんの顔が見えず、髪の毛で覆われています。
 ホラーです。貞子です。髪の毛から声が出ています。


 後で真相を究明すると、トモカちゃん曰く、一本結いにしていたので、頭頂部が痛くなり、髪の流れを逆にしていたそうです。まぁ、僕を驚かせる意図はなく、無邪気に豊富な毛を自慢したのでしょう。
 それは、僕が普段からトモカちゃんに「(髪を)くれ」と言っていたからでしょう。僕の発言を忘れないなんて、愛されているなぁ。

 トモカちゃんは向日葵のように微笑みます。
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登録日 2019.05.29 16:12

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