『Brechen』『花』『紅蓮』『最後の砦』『山椿』『七つの海を渡っても』4時間ごとに個人サイトで公開中
『Brechen』
「……どうしましょう」
山杉が困った顔で寄ってきて村野に囁いた。
「お帰りになりません」
「……私が行きます」
『花』
「頼んでおいたもの、準備できてる?」
明日がホワイトデーという日、京介は会社帰りに『村野』に寄った。
入り口近くのガラスケースを覗き込んでいると、京介の声に村野が奥から出てきた。
「いつもありがとうございます。苺ババロア12個、でしたよね」
『紅蓮』
「何でだよ」
「………」
母親は無言で父親に目を向ける。
「何で、好きなところに行っちゃいけねえんだよ」
高校進学の時、大輔には選択肢はなかった。
「お前は家を継ぐんだ」
「あいつは」
『最後の砦』
「美並はあなたを選んだのか」
低い声が響いて、志賀は微かに視線を上げる。大石が強ばった顔で受話器を握っている。
この人が感情をここまではっきり示すのは珍しい、とキーボードに向かいながら名刺入れの奥に忍ばせた一枚のカードを思い出す。
よほどこだわる相手なんだな。
『山椿』
その日、雪が積もった職場の庭に、点々と転がり落ちていた薮椿。
『圭吾は自殺しました』
奈保子の声がゆっくりとしみ込む頭を、鮮やかな紅が侵す。
『七つの海を渡っても』
「七海」
「……明さん」
くたりと熱い体を横たえていたのを起き上がろうとしたら、指を絡められてそっと引き上げられる。辿りつくのは柔らかな唇。人さし指、中指、薬指、親指、それから。
「あ…」
結婚が決まってからは儀式のようになっている小指を軽く含まれて、七海は体を強ばらせた。
「……どうしましょう」
山杉が困った顔で寄ってきて村野に囁いた。
「お帰りになりません」
「……私が行きます」
『花』
「頼んでおいたもの、準備できてる?」
明日がホワイトデーという日、京介は会社帰りに『村野』に寄った。
入り口近くのガラスケースを覗き込んでいると、京介の声に村野が奥から出てきた。
「いつもありがとうございます。苺ババロア12個、でしたよね」
『紅蓮』
「何でだよ」
「………」
母親は無言で父親に目を向ける。
「何で、好きなところに行っちゃいけねえんだよ」
高校進学の時、大輔には選択肢はなかった。
「お前は家を継ぐんだ」
「あいつは」
『最後の砦』
「美並はあなたを選んだのか」
低い声が響いて、志賀は微かに視線を上げる。大石が強ばった顔で受話器を握っている。
この人が感情をここまではっきり示すのは珍しい、とキーボードに向かいながら名刺入れの奥に忍ばせた一枚のカードを思い出す。
よほどこだわる相手なんだな。
『山椿』
その日、雪が積もった職場の庭に、点々と転がり落ちていた薮椿。
『圭吾は自殺しました』
奈保子の声がゆっくりとしみ込む頭を、鮮やかな紅が侵す。
『七つの海を渡っても』
「七海」
「……明さん」
くたりと熱い体を横たえていたのを起き上がろうとしたら、指を絡められてそっと引き上げられる。辿りつくのは柔らかな唇。人さし指、中指、薬指、親指、それから。
「あ…」
結婚が決まってからは儀式のようになっている小指を軽く含まれて、七海は体を強ばらせた。
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登録日 2017.01.01 05:30
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