誰が何のためにそれを欲するのか。
我々は何故そこに突き進んでしまうのだろうか。
多分、本当の答えは誰に尋ねたとしても分からない。
正義のためだという人もいるだろう。
報復のためだという人もいるだろう。
やむを得ない自衛のためだという人もいるのだろう。
だが、人類が歩んできた歴史は、白黒のハッキリした、あらかじめ誰かに決められていた結末に向かって動いているのではないことだけは確かだ。
歴史の真実はいつも灰色をしている、人類をより洗練させる欲望の白い糸と腐敗した欲望と悪意に汚された黒い糸で織り込まれた灰色の布だ。
そしてそれはこれからもそうなのだろう。
己が信じた神のために。
愛する故郷や家族のために。
誰よりも大切な誰かのために。
そう信じて戦い、死んでいった人はいただろう。
金のために。
保身のために。
権力のために。
そして何より人々を戦争に揺り動かすのは、見えない相手の心に対する恐怖という名の猜疑心のためだ。
信じたくない人はいるだろうがこれも事実だ。
様々な国の人々の利害や猜疑心、積年の怨嗟、偶然という名の不運があの言いようもなく虚しい世界戦争を生み出したのかもしれない。
そして我々は今もなおその呪縛から解き放たれる事が出来ない。
ただ決して変わらない事実もある。
勝者は誤りも正しさも裁かれることはなく、敗者は誤りも正しさも裁かれるのである。
戦争は決して負けることの許されない世界規模の生存競争である。
その意味では、国家規模で自殺を試みる国家はもはや世界という名の歴史を生きていく資格などない。
あの二度に渡る世界戦争で得た教訓は価値があるはずだ。
もう二度と戦争前の美しかった夢の思い出が帰ってこないのと同じように。