『周一郎舞台裏』8.シーン204アップ。最終話
『こんなところにするのかい?』
直樹は滝の後ろを付いていきながら、何回目かのいちゃもんをつける。むっとした顔で滝がやり返す。
『ここにする!』
『倒れそうだよ』
『住めば都だ!』
『すきま風が入るんじゃない?』
『セーターの下に新聞紙を巻く!』
『火事ですぐ燃えそう』
『あったかくてちょうどいいじゃないか!』
ふん、と肩を聳やかせて、何が何でもそのアパートに入って行こうとする滝の後ろで、直樹の表情は複雑に変化する。じれったそうな悔しそうな、行って欲しくないようなこのまま行かせてやりたいような……微妙な変化の後、直樹は周一郎の口調で滝を引き止める。
『行かないで下さい、滝さん』
びくんと滝が肩をこわばらせ、形相物凄く振り返る。
『周一郎のまねはやめろと…』
言いかけて、ぽかんとした顔になったのは、相手の気配の違いだけではない、目の前に現れた亡霊に度肝を抜かれたからだ。その滝に顔を背け、今は真実、周一郎そのものに戻った直樹が呟く。
『だって、言わなくちゃ、滝さんは行ってしまうでしょう?』
照れくさそうな、どこかはにかんだ調子の声に、滝はくるりと向きを変え、唐突にまっすぐアパートへ進んで、周一郎を驚かせる。
直樹は滝の後ろを付いていきながら、何回目かのいちゃもんをつける。むっとした顔で滝がやり返す。
『ここにする!』
『倒れそうだよ』
『住めば都だ!』
『すきま風が入るんじゃない?』
『セーターの下に新聞紙を巻く!』
『火事ですぐ燃えそう』
『あったかくてちょうどいいじゃないか!』
ふん、と肩を聳やかせて、何が何でもそのアパートに入って行こうとする滝の後ろで、直樹の表情は複雑に変化する。じれったそうな悔しそうな、行って欲しくないようなこのまま行かせてやりたいような……微妙な変化の後、直樹は周一郎の口調で滝を引き止める。
『行かないで下さい、滝さん』
びくんと滝が肩をこわばらせ、形相物凄く振り返る。
『周一郎のまねはやめろと…』
言いかけて、ぽかんとした顔になったのは、相手の気配の違いだけではない、目の前に現れた亡霊に度肝を抜かれたからだ。その滝に顔を背け、今は真実、周一郎そのものに戻った直樹が呟く。
『だって、言わなくちゃ、滝さんは行ってしまうでしょう?』
照れくさそうな、どこかはにかんだ調子の声に、滝はくるりと向きを変え、唐突にまっすぐアパートへ進んで、周一郎を驚かせる。
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登録日 2016.12.23 14:00
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