segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『ラズーン』第一部 2.セレド皇宮(1)(2)

 ゆったりとした石造りの浴室で、アシャは旅の疲れと汚れを落としている。
 久しぶりの屋内、敵に命を狙われることもない。
 体のあちこちに負った傷と逃亡で酷使した筋肉に熱い湯がしみ入るようだが、それでもこの寛ぎはたまらない。セレドに沐浴の習慣があって助かった、と思う。
「ふぅ…」
 窓の外はまだ薄闇、さすが田舎だけあって、この暗さでもう周囲には静けさが満ちている。
 湯舟にゆったりと体を伸ばして、額に張り付いた濡れた髪を掻きあげ、アシャは湯舟の端に頭をのせた。
 小国、セレド。
 ラズーンより遠く離れたこの国の名前は、実は意外なことで知られている。皇宮に住まう3人の皇女、中でも長女レアナの美しさは旅芸人や吟遊詩人が歌にするほどだ。
 アシャ自身も、やれどこかの大国の王子が手に入れ損なって悔しがったとか、やれ軍を率いて攫いにいったがレアナに微笑まれてすごすご戻ったとか、お伽話のような噂を聞いている。
 半分はでっちあげだろうと思っていたが、本物は確かに美しかった。単に見目形のことだけではなく、立ち居振る舞い表情仕草、全てが皇女とはかくあるべきだという規範のような艶やかさ、それだけでもここまでやってきたかいはあったかもしれない。
 末の姫セアラもまだ幼いながら凛とした気迫があり、レアナと揃っての母親似、あっという間に人目を魅く美姫になろうことは間違いない。
 がしかし。
「血というのは…不思議なものだな」
 苦笑しながら思い出したのは、ユーノと呼ばれたあの『姫』で。
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登録日 2016.12.17 01:24

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