『周一郎舞台裏』6.シーン203(3)アップ。
慌ただしく過ぎ去る日々の中、数十本単位で公開される映画、それどころか、もっと大量に流れるネット画像に紛れて、これほど手間暇かけて作ったものも数秒で忘れ去られる。
『記憶に残ることさえ難しい、もう一度観てもらえるなんて、それこそ奇跡にも近いことだよ』
割に合わない。意味がない。いずれ捨て去られるのだ、記憶の彼方へ。そんなものに人生を費やして何が残る。
『そろそろ、先を考えて欲しい』
手紙は繰り返し訴えていた。
もう十分だろう。夢の切れ端は叶った、それで十分幸せだと考えなくちゃいけない。ほとんどの人間が、その切れ端が掌を掠めることもなく一生を終えていくのだから。
『帰っておいで』
両親は田舎で小さな工場をやっていた。従業員は2人。大企業の下請けの下請けのまた下請けみたいなものだけど、父親の腕が良くて、その部品は父親の工場でしか仕上がらなかったから仕事は途切れなかった。
『もっと地道でしっかりと地に足がついた仕事が大事だよ』
「ふぅ…」
修一が満足したような吐息を重ねた。吐息一つにも色気があるよな、と考えてうんざりした。
(帰るか)
オレンジジュースの最後の一口を飲み干した。
『記憶に残ることさえ難しい、もう一度観てもらえるなんて、それこそ奇跡にも近いことだよ』
割に合わない。意味がない。いずれ捨て去られるのだ、記憶の彼方へ。そんなものに人生を費やして何が残る。
『そろそろ、先を考えて欲しい』
手紙は繰り返し訴えていた。
もう十分だろう。夢の切れ端は叶った、それで十分幸せだと考えなくちゃいけない。ほとんどの人間が、その切れ端が掌を掠めることもなく一生を終えていくのだから。
『帰っておいで』
両親は田舎で小さな工場をやっていた。従業員は2人。大企業の下請けの下請けのまた下請けみたいなものだけど、父親の腕が良くて、その部品は父親の工場でしか仕上がらなかったから仕事は途切れなかった。
『もっと地道でしっかりと地に足がついた仕事が大事だよ』
「ふぅ…」
修一が満足したような吐息を重ねた。吐息一つにも色気があるよな、と考えてうんざりした。
(帰るか)
オレンジジュースの最後の一口を飲み干した。
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登録日 2016.12.13 00:17
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