『周一郎舞台裏』5.シーン305(2)アップ。
「こちらへ、修一君」
聞き覚えのある声と同時に、おそらくは車のヘッドライトだろう、目を射る光の中を横切って、1人の男がやってきて手を伸ばす。眩さに眼を細めて、何とか相手の姿形を見定めようとするが、ライトは明る過ぎて視界を白く灼き、影がかろうじて見て取れるだけだった。
ぐっと手首を掴まれる。大きな分厚い手にそのまま自分の手首が握り潰されそうな感覚が重なって、修一が息を呑んでいる瞬間、今度は別口の暗い穴、すぐ側まで迫っていた車の後部座席へ引きずり込まれた。
「、っっ!」
もがこうとして腕をねじ上げられ、咄嗟に振り向いた隣の席、酷薄そうな顔を眼にした途端に目隠しされ、修一は体を強張らせた。
「静かに。行き先を知ってほしくないだけだよ」
穏やかに諭す声が返って不気味だ。この先の命はないものだから、あえて優しくしている、そんな気さえする。
それでも修一は声を絞った。
「お…かあ…さんは…」
「無事だよ。……少々、疲れてはいるがね」
微かに響いた嘲りに、修一は唇を噛む。
聞き覚えのある声と同時に、おそらくは車のヘッドライトだろう、目を射る光の中を横切って、1人の男がやってきて手を伸ばす。眩さに眼を細めて、何とか相手の姿形を見定めようとするが、ライトは明る過ぎて視界を白く灼き、影がかろうじて見て取れるだけだった。
ぐっと手首を掴まれる。大きな分厚い手にそのまま自分の手首が握り潰されそうな感覚が重なって、修一が息を呑んでいる瞬間、今度は別口の暗い穴、すぐ側まで迫っていた車の後部座席へ引きずり込まれた。
「、っっ!」
もがこうとして腕をねじ上げられ、咄嗟に振り向いた隣の席、酷薄そうな顔を眼にした途端に目隠しされ、修一は体を強張らせた。
「静かに。行き先を知ってほしくないだけだよ」
穏やかに諭す声が返って不気味だ。この先の命はないものだから、あえて優しくしている、そんな気さえする。
それでも修一は声を絞った。
「お…かあ…さんは…」
「無事だよ。……少々、疲れてはいるがね」
微かに響いた嘲りに、修一は唇を噛む。
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登録日 2016.12.09 21:09
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