『ラズーン』第一部 1.二つの名の下に(4)(個人サイトでアップ)
あれほどくっついて離れなかったように思えた手から力が抜ける。するりと滑り落ちた手をそのままに、なぜかぼやぼや歪んだ視界で、ぼんやりと相手を見た。
「う……ん」
頷いて俯いて、その瞬間にユーノは、ぴんぴん跳ね返って手入れもしていない焦げ茶の肩までの髪や、埃まみれで汗臭いチュニックや、姉や妹といつも比較される自分の容貌を一気に思い出した。
いつもどこでも女性と認識されることさえなかった、数々の記憶も。
(何を、期待した……?)
苦笑を押し上げようとして、それがうまくいかなくて唇を噛む。いつものことだ、そう思ったのに、何だかひどく居畳まれなくなった。
急いで立ち上がった途端、背後から優しい声が響いてユーノはぎょっとする。
「その方ですか、ユーノ」
「……レアナ姉さま」
「う……ん」
頷いて俯いて、その瞬間にユーノは、ぴんぴん跳ね返って手入れもしていない焦げ茶の肩までの髪や、埃まみれで汗臭いチュニックや、姉や妹といつも比較される自分の容貌を一気に思い出した。
いつもどこでも女性と認識されることさえなかった、数々の記憶も。
(何を、期待した……?)
苦笑を押し上げようとして、それがうまくいかなくて唇を噛む。いつものことだ、そう思ったのに、何だかひどく居畳まれなくなった。
急いで立ち上がった途端、背後から優しい声が響いてユーノはぎょっとする。
「その方ですか、ユーノ」
「……レアナ姉さま」
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登録日 2016.12.09 20:56
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