『ラズーン』第一部 1.二つの名の下に(3)(個人サイトでアップ)
(カザド?)
咄嗟に腰の剣に手が滑りかけ、ようよう自制した。
こんなところで仕掛けてくるわけはないし、大人しく群集が取り囲んでいるわけもなかろう。
第一、目の前に居るのは異国風の服装はしているがひょろりとした優男、腰に剣も帯びてないばかりか、疲れ果てているのだろう、ぐたりと寝そべっている。
「どうした?」
「あ、ユーノ様!」
男の側にしゃがみ込んでいた兵が慌てて立ち上がり頭を下げた。肩に皇宮の見回り役の徴がある。
とすると、この行き倒れの件はもう皇宮に伝わっているらしい。
周囲がユーノを見つけてざわめいたが、常日頃から町中をうろうろしている彼女に民衆は慣れっこだ。
「旅人らしいのですが、よろよろやってきていきなり倒れたらしいのです」
「ふうん」
近寄って覗き込み、ユーノは思わず瞬きした。
泥や埃、すり傷などでかなり汚れているが、この辺りでは見ないような黄金色の髪、男にしては白い肌は滑らかで、年の頃は22、3、いやもう少しいっているか。服装は粗末だが体格は悪くない。細身ながらも筋肉はしっかりしている。
それだけなら人だかりもすぐに離れようが、問題はその女性と見まごうばかりの美貌だった。
長い睫、通った鼻筋、聡明そうな額の下に今は閉じられているが大きな瞳。レアナを見慣れているセレドの者でさえ、ついつい覗き込み見愡れてしまうような艶やかさだ。
咄嗟に腰の剣に手が滑りかけ、ようよう自制した。
こんなところで仕掛けてくるわけはないし、大人しく群集が取り囲んでいるわけもなかろう。
第一、目の前に居るのは異国風の服装はしているがひょろりとした優男、腰に剣も帯びてないばかりか、疲れ果てているのだろう、ぐたりと寝そべっている。
「どうした?」
「あ、ユーノ様!」
男の側にしゃがみ込んでいた兵が慌てて立ち上がり頭を下げた。肩に皇宮の見回り役の徴がある。
とすると、この行き倒れの件はもう皇宮に伝わっているらしい。
周囲がユーノを見つけてざわめいたが、常日頃から町中をうろうろしている彼女に民衆は慣れっこだ。
「旅人らしいのですが、よろよろやってきていきなり倒れたらしいのです」
「ふうん」
近寄って覗き込み、ユーノは思わず瞬きした。
泥や埃、すり傷などでかなり汚れているが、この辺りでは見ないような黄金色の髪、男にしては白い肌は滑らかで、年の頃は22、3、いやもう少しいっているか。服装は粗末だが体格は悪くない。細身ながらも筋肉はしっかりしている。
それだけなら人だかりもすぐに離れようが、問題はその女性と見まごうばかりの美貌だった。
長い睫、通った鼻筋、聡明そうな額の下に今は閉じられているが大きな瞳。レアナを見慣れているセレドの者でさえ、ついつい覗き込み見愡れてしまうような艶やかさだ。
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登録日 2016.12.08 23:44
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