『桜の護王』10.直面(ひた面)(4)アップ。
(どうか……あたしにも、大切な人が現れますように)
物心ついてからずっと、茜と比較され続けてきた。洋子は洋子なりに頑張ってはみていたのだけど、それでも持って生まれた華のなせる自信ばかりはどうにもならず、茜がいろんな男に誘われたりプレゼントを受け取るたびに、そっと小さな吐息をついた。
いつも呼ばれるのは「茜の姉さん」。
綾、となぜかそればかりは華やかな自分の名前を呼ばれることなどめったにない。
だからといって誰かに求められることを諦めていたわけではない。いつかできることならば。いつか優しい愛しい人と、小さな居場所が持てたなら。
けど、さすがに二十五過ぎれば、それがどんな子どもじみた願いだかはよくわかっている。
でも、だからこその最後の願い、でもあった。
そこで洋子は護王に出逢った。
『ここで何をしている?』
どう見ても年下の、けれどはっとするほど黒々とした瞳で見つめられて、洋子は呼吸を忘れてしまった。桜舞い散るあでやかな光景を背負ってなお見劣りしない端麗さ、それを意識していないかのような傍若無人な物言いさえも胸を貫くに十分で。
物心ついてからずっと、茜と比較され続けてきた。洋子は洋子なりに頑張ってはみていたのだけど、それでも持って生まれた華のなせる自信ばかりはどうにもならず、茜がいろんな男に誘われたりプレゼントを受け取るたびに、そっと小さな吐息をついた。
いつも呼ばれるのは「茜の姉さん」。
綾、となぜかそればかりは華やかな自分の名前を呼ばれることなどめったにない。
だからといって誰かに求められることを諦めていたわけではない。いつかできることならば。いつか優しい愛しい人と、小さな居場所が持てたなら。
けど、さすがに二十五過ぎれば、それがどんな子どもじみた願いだかはよくわかっている。
でも、だからこその最後の願い、でもあった。
そこで洋子は護王に出逢った。
『ここで何をしている?』
どう見ても年下の、けれどはっとするほど黒々とした瞳で見つめられて、洋子は呼吸を忘れてしまった。桜舞い散るあでやかな光景を背負ってなお見劣りしない端麗さ、それを意識していないかのような傍若無人な物言いさえも胸を貫くに十分で。
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登録日 2016.09.05 12:48
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