本日の短編(13)
ゾフィーとノエルの続き。
『彼女はうんと言ってくれない・2』
「……トド……」
彼女の言葉を復唱しながら、俺は思わずぽかん、とした。
「ノエル様はそうなった私を、嫌いになりますわ」
そう言ってゾフィーが瞬きすると奇麗なアメジストの瞳から涙がとうとう零れた。
それを俺が指で拭き取ると、ゾフィーは白い頬を赤くする。
――それにしても、腹が立つなぁ。
「ゾフィーはどうして、俺を信用しないの?」
俺の言葉にゾフィーはびくりと身を震わせた。
気をつけたのだけど言葉に少し怒気が含まれてしまったかもしれない。
「俺はゾフィーを、見た目だけで好きになったわけじゃないよ。どんなゾフィーも好きだ」
「……ノエル様」
ゾフィーは再び瞳から涙を零しながら、感動を含んだ表情で俺を見た。
この子はどうして自己評価が低いのかな。
もしかすると、スレンダーな女性が社交界でもてはやされている弊害かもしれない。
絶対にふわふわもちもちしている方が可愛らしいのに。
そんなことを思いながらゾフィーの胸に思わず目をやってしまう。
俺の言葉に感激しているらしいゾフィーがその視線に気づいていないうちに、ガン見したい欲望を抑えて俺はそっと立派なものから目を逸らした。
「丸くなっちゃうのが嫌なら、うちの訓練に参加する?」
「……ダウストリア家の訓練はハードとお聞きしますけど」
俺の提案にゾフィーは及び腰だ。まぁハードはハードだけど……。
「あくまで準備運動だけ。うちの邸の外周を100周して、腹筋を100……」
「じっ……自分で頑張りますわ!! そう! 自分の力でダイエット最高ですの!」
ゾフィーは死んでしまいそうだと言わんばかりの悲鳴のような声で言った。
……まだまだメニューはあるんだけどな。
「自力で頑張るんだね。増えた分が減ったら婚約のこと考えてくれる?」
「わ……分かりましたわ。頑張ります!」
ゾフィーは胸の前で握りこぶしを作った。
「頑張ると決めたら、お腹が空きましたわね」
そう言って注文に行き、両手いっぱいにお菓子を買って帰ってきたゾフィーに色々とツッコミたかったけれど。
……彼女が幸せそうだから、別にいいや。