segakiyui

segakiyui

『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『周一郎舞台裏』2.シーン202ーーシーン118(4)アップ。

 脚本を受け取り捲りかけたが、カミソリの傷は結構深くて痛むものだ。日にちがたてば楽になるのだろうが、指先の敏感な神経をささくれ立った木で撫で上げられた気がして、思わず顔を歪める。
「あ、オレ、捲ろうか」
 修一の表情に気づいたのか、部屋を汚しプレゼントを踏み散らかした代償と言わんばかりに、急いで垣が脚本を取り上げる。
(滝、そっくり)
 今度はふわりと笑ってしまった。
「速かったり遅かったりしたら言ってくれよ」
「うん」
 1ページずつ、覗き込む修一の視線を見ながら頁を捲ってくれる垣の仕草に、心のどこかが静かに吐息をつくのがわかる。ほっとしている。安堵している。これ以上傷つけられずに済む、そう呟く声が聴こえてくる。
(僕が…くつろいでる……?)
 垣の行動は、ただ単に映画界のサラブレッドとしての修一に対するへつらいかも知れないのに。修一のコネにすり寄る、あまたの大人達と同じなのかも知れないのに。
(これじゃ、まるで周一郎の行動の繰り返しじゃないか)
 自分の心の動きに戸惑う、それこそ『まるで』周一郎の想いをトレースするように。
(こんなこと、初めてだ)
コメント 0
登録日 2016.12.01 01:15

コメントを投稿する

1,000文字以内
この記事に関するコメントは承認制です

ログインするとコメントの投稿ができます。
ログイン  新規ユーザ登録

0

処理中です...

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。