夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(7)中

「でも、もう家族はこの力のことを知っているよ」

 あの人達はいずれ秘密を抱えることに耐えられず、私がこの力を持っていることを他人に話してしまうだろう。
 幼い私でも、そんな確信はあった。

「大丈夫、彼らのこの魔法に関する記憶は僕の魔法で消してあげる。君を愛する家族に、彼らは戻るんだ」

 叔父の言葉に、私は大きく目を開いた。
 
 ……翌日。
 叔父の言う通り家族は『犬』に関わる記憶を……すっかり忘れていた。

「おはよう、マクシミリアン。よく眠れた?」

 母が、父が、私に優しく笑いかける。
 この2年間のことなんて……2年間の私の苦しみなんて。
 何もなかったかのように。

「おはよう、よく眠れたよ」

 そう言って私は、笑おうとしたけれど……上手く笑うことが、できなかった。

「そういえばもうすぐお前の誕生日だな。何か欲しいものはあるか?」

 父の言葉にそういえばそんなものもあったな、と冷えた心で思う。

「……俺が生まれたことを、祝ってくれるの?」
「当たり前でしょう? 可愛い息子の誕生日を祝わなかったことなんてある? 貴方が無事生まれてくれたことに、私達感謝しているのよ」

 楽しそうに言う母の言葉に『嘘だ』と喚き散らしたくなる気持ちをこらえて。
 私は、『家族』の輪に入るべく歩みを進めた。
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登録日 2018.11.06 06:18

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