夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(5)

次のイチャイチャ話を追加する前に、マクシミリアンの昔のお話。
67話以降のネタバレ&暗め注意です。



『私の昔の話・1』

 私……マクシミリアン・セルバンデスは、子供時代のある期間孤独だった。

 きっかけは忘れもしない。セルバンデス家に強盗が押し入ってきたあの日。
 押し入った賊達は口封じにと私達家人の命を奪わんとし、振り上げられた銀色に鈍く輝く刃を5歳の私は茫然と眺めていた。
 凶行を制止しようとする母の甲高い声が部屋に響き渡り……。
 次の瞬間、私の意識は途絶えた。

 ――――意識を取り戻した私が見たのは、強盗達『だった』何かと、私に怯える母、頭を抱えて震える父、泣き叫ぶ兄二人……。
 まるで地獄のような光景だった。
 何が起きたのか理解できず母に手を伸ばそうとしたが、

『私は化け物を産んでしまった』

 母はそんな事を喚きながら、私の側から走って逃げて行った。
 その後ろ姿は、今でも私の記憶に焼き付いている。

 その日から私は『犬』達を使えるようになり、家族には腫れ物のように扱われた。
 彼らは私に怯え、拒絶を露わにし、時には自分達の身の安全のためか機嫌を取ろうとへつらうような笑顔を見せた。
 両親は私の使う魔法の正体は分からないまでもその異常性には気づき、処遇に困り果てたようだった。
 もっと薄情な家族なら『金のため』『権威を得るため』『家族の安全のため』となんらかの理由で私を売るなり外に放り出すなりしてしまっただろう。
 だけど彼らは中途半端に善人だったためかそこまでの行動を取る事ができず、私の『犬』の事を家の秘密として隠し私を家内に置く事を選んだ。
 彼らはただ問題を先送りしただけなのだろうが、私の『犬』の事が世に知られずに済んだのだからそこは感謝するべきなのかもしれない。

 突然冷たくなった家族達に戸惑いながら、一人で冷たい食事を取り、母に抱きしめられることも、手を繋いでもらうことすらしてもらえず、悲しくて泣きながら一人で眠る。
 
 そんな日々は2年の間続き、私は7つになっていた。



続きは明日朝にでも。
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登録日 2018.11.06 01:10

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