本日の短編(2)
本日の短編。昨日投下の続き。
『令嬢と執事と誕生日・2』
「お嬢様、ありがとうございます……!」
誕生日当日。
マクシミリアンにプレゼントの箱を手渡すと、彼は例年通りに奇麗な造形のお顔に本当にうれしそうな笑顔を浮かべて受け取ってくれた。
ゲーム中とは違うその柔らかな笑顔を見ていると、マクシミリアンと積み重ねた歳月がよい方向に実っているのを実感できる。
「お嬢様の瞳と髪と同じ色の包装なのですね。開けてしまうのがなんだかもったいないです」
マクシミリアンはしげしげとプレゼントの箱を見るとつぶやいた。
ジョアンナから渡された瞬間わたくしもそう思ったけれど、改めてそう言われると照れてしまう。
「……は……早く開けて!」
「……お嬢様に触れるように優しく開けないといけませんね」
マクシミリアンに催促すると、彼は神妙な顔でこちらが恥ずかしくなる事を言った。
なんだか、語弊があるというか……。他人に聞かれたらまずい発言のような気がする。
確かにマクシミリアンとは毎日おはようとおやすみのハグをしているし、その時には優しく抱きしめられているけど……!
長い形のいい指が銀色のリボンを解くのを、わたくしは面映ゆくなりながら見つめた。
リボンの次には、かさり、と小さな音を立てながら丁寧に水色の包装紙が取り去られ、白い小さな箱が中から現れた。
「気に入ってくれるといいんだけど……」
マクシミリアンの身に着けるものの傾向はシックというか上品で質が良いものが多いように思える。
そんな彼の趣味に合ったものをきちんと選べているのか、わたくしは少し心配だった。
長年一緒に居るのに好むものさえきちんと把握できていないなんて……なんだか情けないわ。
マクシミリアンは箱を開けると、中身を見て少し目を細めた。
「……素敵なものですね」
「本当? 本当にそう思う!?」
「はい、私の趣味にぴったりです。さすがお嬢様」
マクシミリアンの言葉にうれしくなって彼の正面に立って見上げると、優しく微笑まれ頭をふわりとなでられる。
はぁ……マクシミリアンのなでなで気持ちがいい……。
心地よさに思わず目を閉じると、なぜか喉もなでられた。
……ね……猫じゃないのよ……!