segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『周一郎舞台裏』1.シーン201(2)アップ。

「ちぇっ…」
 安アパートの階段は、いつ塗り直したのかわからないほど錆が浮いた鉄製だ。へたな場所を踏むと、鉄なのにぎい、と妙な音をたててきしむあたりが恐ろしい。
「……まったく、散々だよな」
 垣はぼやきながら、注意深く階段を上った。
「そりゃあ、あいつは名子役だよ? けど、オレは違うっての」
 ぶつぶつ呟きつつ部屋のドアの前に立ち、合板だかベニヤ板だかを薄い板で何度か補修した状態の扉を眺めて溜め息をつく。
(このアパートを出られるの、いつだろう)
 何度目か考えたそれに、また小さく息を吐いた。
(まあ、今回も何とか、役はもらえたが)
 エキストラぎりぎりの、通行人AとCとKの掛け持ちとか、数人転がっている死体の一人とかの役よりは数段、いやかなりうんとましなんだぞ、と自分を慰める。そりゃ確かに、ののしられたり嗤われたりするばかりの役だが、このドジでおっちょこちょいの、周一郎の引き立て役が全ての仕事のような、『滝』という役があるだけで、明日に多少の希望が持てる。
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登録日 2016.11.27 00:23

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