「ゴルノヴァさんも探して一緒に来ようと思ったんですけど、どこにいるかわからなくて。すみません、僕の力不足で」
「悪いのは私です」
「マーレフィスさん、あまり自分を責めないでください。落書きはもう消していますので、ミミコさんに情状酌量を求めていますから」
「私はとても幸せです」
「そんな、当然のことですよ。マーレフィスさんは気にしないでください」
「悪いのは私です」
……あれ? 何か様子がおかしい?
そう思ったとき、ユーリシアさんが僕の肩に手を置いた。
「クルト、面会時間はもう終わりだ。規則だから帰るよ」
「え? もうそんな時間なんですか? わかりました。また今度面会に来ますからね」
「私はとても幸せです」
マーレフィスさんは、ずっと同じ笑みを浮かべたままそう言ってくれた。
その後、王都でリーゼさんへのお土産を買って帰ったんだけど、どういうわけか、その後再び面会の許可がなかなか下りなかった。
ただ、その話をしたとき、ユーリシアさんから「洗脳がまだ不安定」とかよくわからない言葉が聞こえた気がするけれど、多分気のせいだよね。
勘違いの工房主、没幕間話「クルトの面会」
書いてみて、かなりえぐい話になったので、没にしました。
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僕たちは王都にあるとある施設に、ユーリシアさんとふたりで訪れていた。
ユーリシアさんは転移石を持っているので、ここに来るまで一瞬だ。
ちなみに、リーゼさんはアクリと一緒にお留守番をしている。アクリも最近はお利口になってきたので、僕かユーリシアさんかリーゼさん、三人のうちひとりが一緒にいたら、他のふたりが外出しても転移魔法で追いかけてくることはなくなった。
リーゼさんは僕を見送る時に、「あの時にチョキを出していれば」と呟き、もしかして呪いをかけているのではないかと思ってしまうくらいに自分の右手を睨み付けていた。そんなに王都に行きたかったのかな? じゃあ今度王都に行く用事がある時は、僕が留守番役を引き受けよう。買い物とかするなら女性同士のほうがいいからね。
なにはともあれ、今日はとても大切な用事があった。
彼女と会うことが許されたのだ。
「お久しぶりです、マーレフィスさん」
そう、そこにいたのは、国宝級の遺跡に落書きをした罪で投獄されているマーレフィスさんだった。
鉄格子の向こうにある椅子に座っているマーレフィスさんは、少しやつれたようだ。かなり辛そうに見える。
「大丈夫ですか? マーレフィスさん」
「私はとても幸せです」
「そうですか、それはよかったです」
すっかり口調も変わってしまったマーレフィスさん。大好きだったワインも飲めない生活が辛いのだろうかと思っていたが、幸せならよかった。手には十字架を大切そうに持ち、穏やかな笑みを浮かべている。まさに聖女という感じだ。
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続きはコメントで
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僕たちは王都にあるとある施設に、ユーリシアさんとふたりで訪れていた。
ユーリシアさんは転移石を持っているので、ここに来るまで一瞬だ。
ちなみに、リーゼさんはアクリと一緒にお留守番をしている。アクリも最近はお利口になってきたので、僕かユーリシアさんかリーゼさん、三人のうちひとりが一緒にいたら、他のふたりが外出しても転移魔法で追いかけてくることはなくなった。
リーゼさんは僕を見送る時に、「あの時にチョキを出していれば」と呟き、もしかして呪いをかけているのではないかと思ってしまうくらいに自分の右手を睨み付けていた。そんなに王都に行きたかったのかな? じゃあ今度王都に行く用事がある時は、僕が留守番役を引き受けよう。買い物とかするなら女性同士のほうがいいからね。
なにはともあれ、今日はとても大切な用事があった。
彼女と会うことが許されたのだ。
「お久しぶりです、マーレフィスさん」
そう、そこにいたのは、国宝級の遺跡に落書きをした罪で投獄されているマーレフィスさんだった。
鉄格子の向こうにある椅子に座っているマーレフィスさんは、少しやつれたようだ。かなり辛そうに見える。
「大丈夫ですか? マーレフィスさん」
「私はとても幸せです」
「そうですか、それはよかったです」
すっかり口調も変わってしまったマーレフィスさん。大好きだったワインも飲めない生活が辛いのだろうかと思っていたが、幸せならよかった。手には十字架を大切そうに持ち、穏やかな笑みを浮かべている。まさに聖女という感じだ。
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コメント 1件
登録日 2018.10.11 13:28
1
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2018.10.11 13:32
時野洋輔
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