『桜の護王』10.直面(ひためん)(1)(2)アップ。
「ここだ」
ごろりと寝転がってまっすぐに視線をやると、視界はピンクがかった白い靄に覆われている。ここなら枝の具合も、ほとんど目に入ってこない空の具合も、そっくりそのままだ。
「あれって……寝転がって見上げた視界の桜だったんだ」
(でも、なぜ?)
夢の中で洋子は横になって桜などを見上げているのか。
寝転がって考えていると、風がやわやわと吹き寄せてきた。地表に近いせいか、立っているほどはっきりと風の道を感じない。緩やかに空気が押し出されて動いていく、という感じだ。背中を日射しを含んだ地面がほこほことした柔らかさで温めてくる。Tシャツ一枚では寒かったのが、今はその生地の薄さが逆にぬくもりを直接伝えてくれる。
「気持ち…いいなあ…」
そう言えば、長い間地面に寝転んでひなたぼっこなんてしていなかった。体全てを預けて受け止めてもらえる安定感、指先に触る微かな草の感触、わずかに香る匂いがどこか護王の体臭にも似ていて。
(護王)
洋子は慌てて滲みかけた視界を閉じた。
ごろりと寝転がってまっすぐに視線をやると、視界はピンクがかった白い靄に覆われている。ここなら枝の具合も、ほとんど目に入ってこない空の具合も、そっくりそのままだ。
「あれって……寝転がって見上げた視界の桜だったんだ」
(でも、なぜ?)
夢の中で洋子は横になって桜などを見上げているのか。
寝転がって考えていると、風がやわやわと吹き寄せてきた。地表に近いせいか、立っているほどはっきりと風の道を感じない。緩やかに空気が押し出されて動いていく、という感じだ。背中を日射しを含んだ地面がほこほことした柔らかさで温めてくる。Tシャツ一枚では寒かったのが、今はその生地の薄さが逆にぬくもりを直接伝えてくれる。
「気持ち…いいなあ…」
そう言えば、長い間地面に寝転んでひなたぼっこなんてしていなかった。体全てを預けて受け止めてもらえる安定感、指先に触る微かな草の感触、わずかに香る匂いがどこか護王の体臭にも似ていて。
(護王)
洋子は慌てて滲みかけた視界を閉じた。
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登録日 2016.09.03 23:19
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