『アシュレイ家の花嫁』11.世界 アップ。
「ひ…」
意識が戻ったその瞬間、マ-スは身体の中から音をたてて血が引くのを感じた。
「いや…だ…」
無意識に漏れた自分のつぶやきを聞き取って既にべっとりと汚れた身体の中心が竦む。だらっと垂れた右腕から申し訳程度にひっかかった薄物、身体の前でかき寄せ握りしめる左手が震えてぱたぱたと胸に当たる。
屋敷の奥深くとは思えないような鍾乳石の広間だった。
壁に取り付けられた燭台が並び、煙をあげながら燃える蝋燭の匂いが満ちている。ちらちら動く火が奥にある舞台を、突き立てられたどす黒くてらてら光る一本の棒を、絡む蛇のような数本のロープを、そして、舞台前の広間で静まり返っている数十人の人間を照らす。
その『観衆』が、扉から入ってきたマ-スと、彼を引きずり上げ押し立てるラピドリアンを一斉に振り返る。期待と興奮に光る眼は、15歳の『祭』の悪夢を思い起こさせる。
「いやだ……」
マ-スは身動きできない身体をよじった。がくがくと膝が震え、ただでさ薬で動けない身体がますます身動きできなくなる。
「やめて…くれ……」
意識が戻ったその瞬間、マ-スは身体の中から音をたてて血が引くのを感じた。
「いや…だ…」
無意識に漏れた自分のつぶやきを聞き取って既にべっとりと汚れた身体の中心が竦む。だらっと垂れた右腕から申し訳程度にひっかかった薄物、身体の前でかき寄せ握りしめる左手が震えてぱたぱたと胸に当たる。
屋敷の奥深くとは思えないような鍾乳石の広間だった。
壁に取り付けられた燭台が並び、煙をあげながら燃える蝋燭の匂いが満ちている。ちらちら動く火が奥にある舞台を、突き立てられたどす黒くてらてら光る一本の棒を、絡む蛇のような数本のロープを、そして、舞台前の広間で静まり返っている数十人の人間を照らす。
その『観衆』が、扉から入ってきたマ-スと、彼を引きずり上げ押し立てるラピドリアンを一斉に振り返る。期待と興奮に光る眼は、15歳の『祭』の悪夢を思い起こさせる。
「いやだ……」
マ-スは身動きできない身体をよじった。がくがくと膝が震え、ただでさ薬で動けない身体がますます身動きできなくなる。
「やめて…くれ……」
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登録日 2016.11.20 12:56
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