『桜の護王』14.鳴滝(2)アップ。
空気は生温く護王を包んでいる。気持ちも心も、もうそれほどもたないことを護王は感じ取っている。
ひたすらに診療所に急ぐのは最後のケリをつけるためだ。
洋子を追い詰めたもの全てをこの手で始末するためだ。
「姫さん……待っててな…?」
今度こそ連れていってくれるやろ、と低い声でつぶやいて微かに笑う顔に正気は残っていない。
あれだけの出血を続けて、人間がもつわけがないことを護王は知っている。飽きるほど長い人生の中で、繰り返した人との別れの中で、よく、知っている。
「嘘つき村上」
日高の診療所で洋子の死体が切り刻まれでもしていたら、その欠片全て掻き集める。流れた血も、肉も、何もかも引き寄せ抱き締め口づけて自分のものにする。
そう考えて護王は詰まった笑い声を上げた。
「なんや……俺も……ほんまに姫さんを喰いたかったんか…」
ひたすらに診療所に急ぐのは最後のケリをつけるためだ。
洋子を追い詰めたもの全てをこの手で始末するためだ。
「姫さん……待っててな…?」
今度こそ連れていってくれるやろ、と低い声でつぶやいて微かに笑う顔に正気は残っていない。
あれだけの出血を続けて、人間がもつわけがないことを護王は知っている。飽きるほど長い人生の中で、繰り返した人との別れの中で、よく、知っている。
「嘘つき村上」
日高の診療所で洋子の死体が切り刻まれでもしていたら、その欠片全て掻き集める。流れた血も、肉も、何もかも引き寄せ抱き締め口づけて自分のものにする。
そう考えて護王は詰まった笑い声を上げた。
「なんや……俺も……ほんまに姫さんを喰いたかったんか…」
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登録日 2016.11.20 12:00
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