『桜の護王』9.蒼(12)アップ。
「なぜ裏切った」
これまでの刺客とは違い、相手は突然真芯に触れてきた。
「祖国を裏切ったのに、なぜ寝返らなかった」
ふいに、胸を突き上げてくるものがあった。
「……忠誠を受けたことがあるか」
「何?」
相手は何を聞かれたのかわからないと言った口調で問い直した。
「忠誠?」
「そうだ。一人の人間から、未来永劫にわたって従うと誓いを受けることだ」
「……ない」
「ならばわからん」
く、と葛城は笑みを返した。十分に意識して体を翻らせ、側の川に身を躍らせる。はっとしたように相手が腰から引き抜いた銃が続けて数発、音を発した。
「っ!」
喧噪に紛れてどこにも届かない銃声、しかし確実に二発、葛城の体を貫く。かっとした激痛の後、一気に冷える感覚に助からないと自覚した。ざぶんと川に呑まれる、その葛城になおも銃弾が打ち込まれてくる。一発が背中から胸へと突き抜けた。
瞬間視界を覆ったのは夏の青空。
(護王)
葛城は笑った。
(また、会えるな)
どぶ泥が体を呑み込み、葛城は意識を失って深く水底に沈んでいった。
これまでの刺客とは違い、相手は突然真芯に触れてきた。
「祖国を裏切ったのに、なぜ寝返らなかった」
ふいに、胸を突き上げてくるものがあった。
「……忠誠を受けたことがあるか」
「何?」
相手は何を聞かれたのかわからないと言った口調で問い直した。
「忠誠?」
「そうだ。一人の人間から、未来永劫にわたって従うと誓いを受けることだ」
「……ない」
「ならばわからん」
く、と葛城は笑みを返した。十分に意識して体を翻らせ、側の川に身を躍らせる。はっとしたように相手が腰から引き抜いた銃が続けて数発、音を発した。
「っ!」
喧噪に紛れてどこにも届かない銃声、しかし確実に二発、葛城の体を貫く。かっとした激痛の後、一気に冷える感覚に助からないと自覚した。ざぶんと川に呑まれる、その葛城になおも銃弾が打ち込まれてくる。一発が背中から胸へと突き抜けた。
瞬間視界を覆ったのは夏の青空。
(護王)
葛城は笑った。
(また、会えるな)
どぶ泥が体を呑み込み、葛城は意識を失って深く水底に沈んでいった。
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登録日 2016.09.01 21:09
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