『古城物語』 5.猫は考える アップ。
「凄まじいことになっちまったなあ」
俺は溜め息まじりに呟いた。
陽射しは相変わらず明るく、緑豊かな城の庭園に満ちている。深緑の垣が芝生を幾重にも切り、色鮮やかな花が咲き乱れるであろう花園は時期が早いのかまだ枝葉が多いが、ところどころに開いた薄桃の花弁が美しい。
『上空から見れば、垣と花園、白い遊歩道と大理石の彫刻で構成されたこの庭園が、見事な幾何学模様になっているはずです』
喜ばしげに話した栗色の髪の女性はもういない。
「ドイツへ来て一週間もたってないのに、もう二人殺されちまった」
「…」
側を歩く周一郎はさっきから考え込んでいて答えない。ベストとスラックスとカッターシャツに軽く緩めたネクタイの軽装だが、目元のサングラスが重かった。横顔が固く、瞳が冷たい。
「周一郎、お前の客、きのう部屋にいなかったな」
「…ええ。ちょっと気になることがあるんでしょう」
俺は溜め息まじりに呟いた。
陽射しは相変わらず明るく、緑豊かな城の庭園に満ちている。深緑の垣が芝生を幾重にも切り、色鮮やかな花が咲き乱れるであろう花園は時期が早いのかまだ枝葉が多いが、ところどころに開いた薄桃の花弁が美しい。
『上空から見れば、垣と花園、白い遊歩道と大理石の彫刻で構成されたこの庭園が、見事な幾何学模様になっているはずです』
喜ばしげに話した栗色の髪の女性はもういない。
「ドイツへ来て一週間もたってないのに、もう二人殺されちまった」
「…」
側を歩く周一郎はさっきから考え込んでいて答えない。ベストとスラックスとカッターシャツに軽く緩めたネクタイの軽装だが、目元のサングラスが重かった。横顔が固く、瞳が冷たい。
「周一郎、お前の客、きのう部屋にいなかったな」
「…ええ。ちょっと気になることがあるんでしょう」
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登録日 2016.10.24 22:14
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