ゆるりこ

ゆるりこ

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朝がきたが、やはり夢じゃなかった。
 人の気配で目が覚めたら、何やらいろいろくっきり見える。どうやら、眼鏡をつけたまま寝てしまったらしい。
 部屋にいたのはメイドさんのようだけど、二人で私の寝顔を覗きこんでいた……。楽しいのか? ガン見する二人と目が合うと、二人は自分を恥じたのか、真っ赤になって挨拶をしてきた。

「「お、おはようございます」」

 ベッドに起き上がってシーツで体を巻き巻きしているのを確かめて、私も挨拶を返した。恥ずかしいので出てってくれないかな?

「おはようございます」

 二人は更に赤くなった。どうして? なんか変? なんか恥ずかしいことしてる?
 首を傾げながら、髪をかきあげるとなんか驚くほど滑らかに指が通った。伸びた前髪を一房掴んで毛先を見ると、黒々として、艶々だ。

「ユメ様、お召し物をお持ちしました」

「はい?」

 メイドさんが差し出してきたのは、なんと、ドレスだった。キラキラしてないし、ヒラヒラもしていないが、ドレスだ。現代日本の現役女子高生はフツーの生活では、まず着用しないであろう、ドレスだ。これを私に着ろと? ボッキュッボンの女優さんとかモデルさんならともかく、花嫁さんでもないのに、こんなの着られるわけがない。辞退させていただこう。

「あのう、すみませんが、他のものはないでしょうか? その、とても素敵なんですけども、私には似合わないと思うので」

「え?」

 メイドさんは目を見開いて私を見て、ドレスを見て、納得したように頷いた。ちょっと傷つくわ。乙女心が……。しかし、また似たようなものを持ってこられても困るので、図々しいが、お願いする。

「その、出来ましたら、男性用の服を貸していただけると助かるのですが。シャツとパンツみたいな」

 それさえ一揃い貸して貰えれば、もう何も要求しませんので! と念じながらお願いすると、二人はボンッと音がしそうな勢いで顔を真っ赤にして首を何度も縦に振り、一人が部屋の外に走って行った。何故赤くなる?

「あのぅ、お名前を教えて下さい」

 呼びにくいので尋ねると、少しタレ目気味で水色の髪のメイドさんは、これまた青い目を大きく見開いて、真っ赤な顔のままで、プルプルと首を振った。イヤなの? 無理には訊かないけどさ。

つづく
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登録日 2017.12.27 20:10

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