けんぽう。

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キャリアの裏で、私はずっと罪悪感に潰されていた──小説を書くことになった理由


NTT、Apple、サイボウズ。
たぶん、履歴書だけを見れば、私は「順風満帆なキャリア」を歩んできた人間に見えると思います。

でも、本当はずっと思っていました。
「自分なんかが、ここにいていいのか?」
「この程度の努力で報われていいのか? もっと努力して、それでも報われない人がいるのに……」

キャリアを積む一方で、ずっと心のどこかに罪悪感がありました。
働いていても、成果を出しても、何かが引っかかっていた。
気づけば、心が限界を迎えていました。

治療を受け、薬を飲んでも回復の実感がない。
そんな日々が4年続き、ようやく出された診断は「双極性障害」。
頑張りたいのに頑張れない。
気持ちだけが焦って、身体も心も追いつかない。

そんな自分を、自分で責め続けていました。
──どんどん、壊れていきました。

 

あるとき、マイケル・サンデル教授の著書
『実力も運のうち──能力主義は正義か?』に出会いました。

自分が抱えていたあの罪悪感は、
正義感でも謙虚さでもなかった。
それは、“能力主義の罠”だった。

ようやく、自分の中のモヤモヤに名前がついた瞬間でした。

でも同時に思ったんです。
この本に書かれている問いは、とても大事なのに──
このままでは、きっと多くの人に届かない。

なら、エンタメにするしかない。
物語として届けるしかない。
そう思って、私は人生で初めて、小説を書きました。

 

スキルを持てば、成功できる。
努力すれば、スキルが手に入る。
スキルを得て、努力して、報われる。

──そんな「希望に見える構造」の裏側にある、静かな搾取。

「正しい制度」が、ゆっくりと、でも確実に人を壊していく構造。
スキルを売らなければ生きられない者と、スキルを買う側の社会。

私が書いたのは、そういう世界です。

 
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登録日 2025.04.12 22:07

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