スランプ脱出リハビリ9
※幼少期
「…ぱぱ、いっしょねる?」
「あぁ、そろそろ寝るか」
アイツと別れた後、両親の家から近くの家に引っ越しをした。
アパートではあるが狭くはなく、両隣も挨拶の時に子育て中の家庭であることを確認済みの為安心して住める場所だ。
唯兎も気に入ったのか、初日からバタバタと走り回っては『ここはぱぱのおへや!』『ここぼくのおへや!』と笑顔を見せてくれる。
それだけが、今の俺の救いだった。
今まで…それも、数ヶ月なんてものではなく何年も小さな身体では抱えられないような事をされていた。
気付けなくてごめんと謝っても謝りきれない程の事をされてきた。
でも唯兎はコテン、と首を傾げて何の事だかわからないというような顔をする。
…カウンセリングの先生は
「この子は誰かのせいだと思っていない、自分が悪いと思い込んでいる」
と悲しげに仰っていた。
それも全て、母親であったアイツが刷り込んだ物だ。
『お前のせいで』
『お前が悪い』
『どうして出来ない』
『どうしてやらない』
『生まれてこなきゃ良かったのに』
それらを毎日のようにこの子にぶつけていたと、親権を取るための裁判中にアイツが言っていた。
髪を引っ張るなんて事は当たり前だったと、最後には逆ギレのように全てを打ち明けたのだ。
横ですー、すー…と寝息を立てる可愛い息子の横顔を見ながらツン、とする鼻を軽く啜る。
俺が泣いていい訳がない。
俺は一番大事な時に気付いてやれなかった、駄目な父親だ。
だからこそ、これからは良い父親であるべきなのだ。
起こさないよう、ソッと小さな小さな身体を抱き締めると暖かい温もりに愛おしさを感じる。
この小さな、愛おしい子を守るのだ。
この子は、歪んでも仕方ない事を今までされてきていた。
もし、これから成長して自身のことを自分で考えられる年齢になりこの子が歪んだとしても俺はこの子を受け止めるのだ。
この子を、誰よりも愛するのだ。
「…んー…ぱ、ぱ…」
「…大好きだぞ、唯兎」
この子は、俺が守るのだ。
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登録日 2025.02.25 04:38
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