スランプ脱出リハビリ8
「おはよう」
「…あ、おはよ」
日曜日の朝、まだ朝の6時だ。
割と早く起きたな、と思っていたら可愛い可愛い弟である唯兎が既にリビングで何かを読んでいた。
挨拶をして温かいコーヒーでも飲もうと準備を始める。
唯兎にも聞くと甘いのがいい、との事でカフェオレを作ることにした。
作り終わり唯兎の隣に座ってカフェオレを渡すと、ありがとうと可愛い微笑みをくれる。
そして朝早くから起きて何を読んでいるのか気になり、手元を見ると…。
「…タウンワーク…?」
「あ、うん。ちょっと気になって」
ペラペラとページを捲っているのはこの近所の情報ページだった。
なんでタウンワーク?と首を傾げながら中を見てみると所々に◯がついていた。
「ねぇ唯兎。この丸はなに?」
「あぁ、来年まで募集してたら応募してみようかなってところ」
「応募!?」
唯兎の言葉に雷に打たれたような衝撃が走った。
応募ってなに?え、唯兎はアルバイトをするつもりなの?
「な、なんでアルバイトしたいの…?」
「だって高校生ってもうバイトできる歳でしょ?なら自分で必要な分くらいは稼がないとかなって」
またペラ、と捲る手をジッと見てしまう。
なんて出来た弟なんだ、と思うと同時に不安が押し寄せてくる。
もしバイト先で先輩から嫌がらせされたら?
客から難癖つけられて嫌な気持ちになったら?
帰りだって遅くなる日があるはずだ、その時に僕が迎えにいけなかったら…?
そう思うと手が勝手に唯兎の手からタウンワークを奪い取っていた。
「え、兄さん…?」
「だ、だめ…」
急に取られたタウンワークに困惑する唯兎を尻目にスマホを取り出してとあるところに電話をしてみる。
迷惑、とかそんな事考えずに行動したがこの時の僕には大事件だったのだ。
『照史か?どうした?』
「お、お義父さん大事件…!唯兎が…!」
『…どうした、唯兎がなんだ』
緊迫した空気に何かを感じ取ったのか、お義父さんの声に緊張が走る。
そんなお義父さんに僕は出来る限り大きな声で大事なことを伝えた。
「…っ、唯兎が!来年アルバイトするって…っ!!」
「…兄さん落ち着いて」
「お義父さんからも!とめて!お願い!」
…この事件は、僕の黒歴史となった。
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登録日 2025.02.18 12:51
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