スランプ脱出リハビリ7
ニャーニャー
ニャーニャー
今日僕の家ではずっと猫の鳴き声がしている。
その発信源は弟である唯兎が持つスマホ、猫の動画を飽きる事なく見続けているのだ。
ニャーニャー
「唯兎、猫飼いたいの?」
「…ん?」
猫の動画を頬を緩めながら見ている唯兎は兄目線で見てもとても可愛らしいと思う。
そのスマホから目を離し僕を見上げた唯兎はまるで猫のようで、既に我が家には猫がいるな、とも思う。
「…んー、飼いたいっていうか…迎えたいっていうか」
「迎えたい?」
「うん、家族になる訳でしょ?それなら飼うんじゃなく、迎えるって表現の方がいい」
スマホに目を戻しながら言う唯兎に目が離せなかった。
ペットに対してそこまで考えたことがなかった事を少し恥ずかしく思いながら唯兎が座るソファの隣に座った。
「…お義父さんに相談してみる?猫、家族に迎えていいか」
「…でも多分迷惑だよ。ただでさえ俺迷惑沢山かけてるし」
「そんな事ないっ」
目線を落とし言う唯兎の肩をつい強めに掴んでしまった。
驚いた様子の唯兎に一言ごめん、と謝り唯兎の目をまっすぐ見て話す。
「…唯兎は凄くいい子だよ、迷惑なんて何も掛けられてない。お義父さんだって、お母さんだって唯兎の事大好きだ。唯兎が自分のことをそんな風に言ったら、ダメ」
少し吊り目気味の目がぱちぱちと瞬きをする。
まっすぐ僕を見ていたその目は少しずつ下にさがっていき自身が持っているスマホに戻る。
しかしそれは、先程あった寂しさや悲しみの表情をしておらず…むしろ恥ずかしさを隠す為だということは理解していた。
耳が少しだけ赤くなっている、これは唯兎が恥ずかしくなったりすると起こる事だ。
唯兎の頭をなるべく優しく撫でると、僕の肩にぽすん、と頭を預けてくる。
「…兄さん、ありがとう」
「どういたしまして、唯兎」
クスクスと笑う僕に釣られたのか、唯兎も控えめに笑い始めた。
こんな幸せがずっと続くよう、僕は唯兎を守っていきたいと思う。
誰にも傷付けさせたくない、この優しい存在を。
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登録日 2025.02.16 12:02
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