スランプ脱出リハビリ5
「なぁ、佐久間」
「なんだ、栗河」
「この状況、変じゃないか?」
俺は意を決して佐久間に尋ねた。
だって、俺の家で映画を観ようってことになって結構前に唯兎が観に来て『面白かった』と感想をくれた作品を観ているところなのだが…俺は何故か佐久間に後ろから抱きしめられながら映画を観ている。
「何もおかしい事はないだろ?」
「いや、だって…」
お腹の辺りに手を組み、引き寄せられるとなんとなくドキドキとしてしまうのは仕方ない事だと思う。
ただそれのせいで内容が全然入ってこないのだ。
講義の意味も込めて爪を立てて手の甲を抓るも、それすらも面白いと言うかのようにクスクスと笑われる。
あーあ、これ唯兎が面白いって言ってたから観たかったのに…全然内容わからない。
拗ねるように唇を尖らせると面白そうに佐久間が俺の顔を覗いてくる。
「…お前、映画の内容全然入らなくて拗ねてるだろ」
「………なんだよ」
「…映画よりも俺を意識してくれてるって事だよな?」
ニッと笑いながらそういう佐久間の頬をつねったおれは悪くないと思う。
何が意識してる、だよ…映画と張り合うな。
事実、映画の内容なんか全くわからないまま時間は過ぎていて、その時間はほとんど佐久間の事ばかりを気にしている。
それがなんとなく腹立たしくて腹に回っている手をペシペシと叩いてみる。
「…ふっ、栗河、ねこみたい」
「…あー、はらたつ」
「しゃーってやって、しゃーって」
揶揄うように言われながら頭を撫でられてもう諦めながら弱々しく「しゃー…」と言えば「それも可愛い」と抱き付かれる。
どうしたらいいんだ、この状況。
「…ばぁーか」
「うん、幸せだよ」
「うるさい、ばぁーか」
誰かこの甘々男を引き取ってくれ。
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登録日 2025.02.11 11:58
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