スランプ脱出リハビリ3
いいな、って思った。
まだ名前も知らない、窓から見ただけのあの人。
女子達が騒いでたからつい見てしまったあの人。
優しい笑顔でクラスメイトの頭を撫でて、美しい顔を緩ませていたあの人に…その一瞬で心を奪われてしまった。
あの人から…七海照史先輩から目が離せなくなった。
ぼくも、あんな風に見つめられたい。
あの人に大事にしてもらいたい。
でも周りからは止められるだけだった。
「照史先輩は好意を向けられるのを嫌う」
「弟を蔑ろにされるのを嫌う」
「照史先輩が気を許してるのは大原と桜野だけ」
クラスの人たちはみんなそう言う。
その割に女子達は好意を全面に出しているけど、そもそもアイドルを好きになる感覚なのだろうか。
気を許してるのは大原と桜野。
2人は弟である唯兎と仲が良い、だから気を許してるとみんなが言う。
多分、あの人に近付く1番の近道は弟と仲良くなる事なのだろう。
それからぼくは、唯兎と仲良くなるために意識して話しかける回数を増やした。
勉強のこと、唯兎自身のこと…照史先輩のこと。
意外にも唯兎はぼくの照史先輩に対する気持ちを否定することはせず、むしろ協力的な行動をすることが多かった。
それでも照史先輩の最優先は唯兎、それは揺るがないものではあった。
それに対してモヤつくことはあれど、イラつきはしない。
だって、あの2人は兄弟だもの。
兄が弟を大事にするなんて普通のこと。
家に親がいないからその分照史先輩が過保護になってるだけ。
そう、思っていた。
でも、唯兎と仲良くなればなるほど照史先輩の視線が兄弟としてのものなのか、自信が持てなくなってくる。
あまりにも、甘い視線。
ぼくは、その視線の意味を知った時…いつものように唯兎と話せるのだろうか。
ぼくは、何もせずにいられるのだろうか。
ぼくは、本当に照史先輩が好きなんだ。
チクンと痛む胸を押さえながら、今日もまた唯兎達と一緒に…。
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登録日 2025.02.08 09:17
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