ロードオブカオス、プライムで見られたので見てきました。
　まぁ、凄かった。
　混ぜるな危険、出会ったら最後、破滅しか見えない。
　でも一番怖いのは、ヴァーグ・ヴィケーネスは存命であることか。

　……まったくもっておすすめできる映画じゃないですけど、ブラックメタル界隈の話を知っていれば見たくなる。
　血まみれで、肉欲で、そして大惨劇。最初はただの不良ぶった中二病が集まっていただけなのに、気が付けば音楽史に残る惨劇になったのは本当だから、その時点で既にやばい。
　主演はもはや怪演、コープスペインとの姿は生前のユーロニモスを思わせる。だけど其処に見えるまともな瞬間が生々しさを盛ってくれる。故に、彼が地獄から回顧するようなナレーションも現実味を帯びる。
　あと、若い頃マジでイケメンだったヴァーグがこれかと突っ込まれていた物の、実際に見たらむしろあれでよかったと思った。そう、何処にでもいる平凡な青年がマジモンになっていく、その事実が、平凡に見える役者だからこそ怖い。
　でも、割とすごいのが日本語字幕監修の川嶋氏、事件三日前にも電話で本人と話していたという事……日本人で関係があった人は彼くらいでしょうし、それが日本語版だと凄いなと。あと、当時の報道が流されるシーン、一瞬日本のニュースが映ってたけど、流石に世界中で話題になったのか？
　……最後の、残されたヘルハマーとネクロブッチャーが映るシーン、あれが何とも……こんな気分になるわなぁと思わされた。深淵を覗き込みながら、引きずり込まれずに残った結果が、ね。

　演出的には、デッドの『写真』を撮ったユーロニモスが、現場検証でポラ撮影されるという終焉が皮肉で印象的で、虚実ないまぜにして描かれた、ほんのひとつまみ位の青春的葛藤が、狂気に葬られてゆくのもまた皮肉。
　……しかし、彼らが居なければブラックメタルは完成せず、何ならalcestも出てこなかったわけだから、ほんとにとんでもない人物が、ほんの一昔前に実在していたのだと実感できた。そしてwikiを改めて読んでると、その伝説を完成させたのは、ベーストラックをそのまま世に出したヘルハマーだな、と。