Yokoちー

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癒されたい。優しくて、くすっと笑え、冒険に心躍らせるお話を目指しています。よろしくお願いします。

感謝! 閑話2/2 前回の続きです!

SS ソラとコウタとディックと  2/2


『3・2・1、今よ』

「それ!」
 見事、大男の足に飛びついてその背に這いあがろうとするコウタ。チチチピピピと小刻みに男の身体の至る所に飛び移り、コウタを弾く手を自分に向ける。
 ディックの動きは確かに速いが、山で共に生活をしたアックスだって相当だ。ソラにとっては慣れたもの。

「おっ、意外に速いな。おい、ソラ! お前、結構鬱陶しいぞ」
 シャカシャカとソラを追うその手は、ぎゅっと握れば潰されてしまいそうなほどに逞しく大きい。だがコウタも順調に奴の背後をよじ登り、間も無く肩に手が届く。

 イタズラな目をしたコウタ。きっと何か仕掛けそう。ほら!

 合図もなくパッと手を離したコウタ。

「おぉ? おっと、その手にゃのらねぇ」

 シュタとコウタを抱き上げたディック。その隙にシュッとスカーフを取ろうとしたけれど、さすが歴戦の冒険者は瞬時の判断でシュゴッとソラを握った。

「ビ、ビ、ピッピ」
ーーーーグテン。

「おっ、おい!」
「わぁ、ソラ、大丈夫?」

 男の手の中でくたりと頭を下げれば、漆黒と琥珀の瞳が慌てたように小鳥で埋め尽くされた。

『今よ、コウタ!』
 心の声にヒュンと反応したコウタは、ディックに抱かれたまま、すっとスカーフを引き抜いた。

「や、やったぁ!」
『やったわ! コウタ』

 ピョンピョンと喜びのさえずりをしながら、駆け回るコウタの頭上をピピピと飛び遊ぶ。
 チッと舌打ちをしたディックにコウタの頬が薔薇色に輝いた。

『あっ・・・』

 喜ぶコウタから弾け出した金の光粒が、ヒュウと吹いた北風に舞い上げられ、渦を巻く。周囲にいた鳥たちが一斉に集まってきた。

 チチチ、ピピピ。ピロロロ……。チュンチュン。クルルクルル。ヒュールルル。

「わぁ、すごい! 鳥がたっくさん」
「おぉ、すげぇな! なんでこんなに集まった?」

 ピカピカの笑顔で空を見上げる二人に、ソラはピピピと可愛い声で鳴き、青いふかふかの羽根をピンと張った。

 ぐんぐん青が近づいてくる。
『うふふ、だってコウタの金の魔力。誰だって大好きだもの』

 つぶやいた独り言は幾多の鳥のさえずりで空に溶けていく。たくましいディックの腕の中で漆黒に光の輪を作る幼児をソラは愛おしく見つめたのだった。



ありがとうございます!
 
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登録日 2023.10.13 21:25

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