『桜の護王』12.召命(1)アップ。
「あたしに……それ…ちょうだい……」
(綾、香…)
「な…護王……護王…」
「!」
再び唇を合されて、けれど今度はきつく噛みつかれもして、洋子は顔を歪めた。とろりとした血の味が濃厚に口に流れ込んでくる。
与えられない酸素に肺が焼け付き、それと呼応するように頭の芯も焦がされ焼けていく。呼ばれているのは護王の名前、組み敷いているのが洋子であるのは百も承知のはずなのに、まるで恋しい男の唇を貪るように、綾香は口付けを繰り返している。ただでさえ循環を奪われた体が冷えきり、火のような息に焙られた口と肺だけが燃え上がる。気を失う寸前の息苦しさに耐え切れず、それでも必死に顔を振り綾香から逃れようとしたとたん、左肩にぎりっ、と指が食い込んだ。
「……っっっ!!」
ことばにならない悲鳴を上げて、洋子は仰け反った。
(ご…おう……)
そのとき、朗々とした声が頭上の岩の天蓋を響かせて振り落ちてきた。
(綾、香…)
「な…護王……護王…」
「!」
再び唇を合されて、けれど今度はきつく噛みつかれもして、洋子は顔を歪めた。とろりとした血の味が濃厚に口に流れ込んでくる。
与えられない酸素に肺が焼け付き、それと呼応するように頭の芯も焦がされ焼けていく。呼ばれているのは護王の名前、組み敷いているのが洋子であるのは百も承知のはずなのに、まるで恋しい男の唇を貪るように、綾香は口付けを繰り返している。ただでさえ循環を奪われた体が冷えきり、火のような息に焙られた口と肺だけが燃え上がる。気を失う寸前の息苦しさに耐え切れず、それでも必死に顔を振り綾香から逃れようとしたとたん、左肩にぎりっ、と指が食い込んだ。
「……っっっ!!」
ことばにならない悲鳴を上げて、洋子は仰け反った。
(ご…おう……)
そのとき、朗々とした声が頭上の岩の天蓋を響かせて振り落ちてきた。
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登録日 2016.10.09 00:39
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