『えぞのあやめ』という歴史恋愛ファンタジーを投稿しています。
こちらにかんしては、まず作中登場人物の行為について、お断りしておかなければなりません。
相思相愛の関係にある両性間の合意によるものではない、暴力を用いた性行為の強要がいきなり描写されています。
しかし、作者がこうした行為・行動を是認する意図は一切ないことをあらかじめ言明いたします。
現在の基準に照らして明白に犯罪行為であるから、というだけではありません。本質的に卑劣な所業として、現在以上に暴力が支配的だった過去においても、その時代の良識ある立場から正当化されるものではなかったものです。
一方で、いわゆるポルノグラフィー（およびそうした描写を利用したエンターテインメント）においては、一種の「ファンタジー」として、こうした暴行行為がやがて愛情につながるというストーリーのパターンが過去にはしばしばみられ、現在も用いられているようです。
本作は、そうした「ファンタジー」を採用するものではないことも、上のようなパターンの是非や今日性の議論を離れて、申しあげておきたいと考えます。
私見では、そうしたパターンはやはり非現実的・不自然であり、異性同性の人間的な理性の否定につながる危険もある、という批判は免れ得ないでしょう。
フィクションという場において、非現実・不自然が排除されねばならないかどうか、「愛情」というのは理性的で社会化されたものなのか、……は、優れた作品がその答えを出すべきものでしょうが、残念ですが本作はその任にはありません。
卑劣で身勝手な暴力行為に対して、「人間の感情の機微」を理由に同情的な立場をとらないことを、改めてお断りしておきたいのです。

もう一つ、急いで付け加えなければならないのは、作中には実在の歴史上の人物の設定を借りた人物が多数登場しますが、それらの人々の考えや行動はすべて虚構です。基本的にそれらの人物はすべて架空のものとお考え下さい。