『BLUE RAIN』18.WHITE DISTANCE アップ。
夢を見ていた。
墓が並んでいる一画にオレンジの樹があった。
鮮やかな実が光っている。うっすらと降っていた雨が止んで、その樹の下で一人の老人が手を伸ばす。きれいな実を一つもいで、足元の墓に供えてくれる。
それは俺の墓だ。
老人は静かに微笑んで、俺の気配に振り返る。
皺のよった顔。白い髪とわずかに灰色がかってはいるけれど、それでも深い黒の瞳。
俺は胸が詰まる。シーン。今年も俺の墓にオレンジを置いてくれたんだ。
シーンは微笑み、近づく俺にそっと頭を下げる。
「あなたもどなたかの?」
「はい」
「去年もお会いしましたね」
「そうですね」
「大事な人ですか?」
「ええとても」
俺はあなたに会いに来ている。誰よりも大切なあなたに。
「それでは」
「はい」
シーンはゆっくりと俺の横を通り過ぎる。俺の姿には気づかない。俺の中身には気づかない。
俺がSUP/20032、スープであったのは遠い昔。それでも。それでも、俺は毎年ここに来る。奇跡を望んで。立ち去っていくシーンが、はっと気づいて俺の名前を呼んでくれる。たったそれだけのことを願って。それが絶対起こるはずのないことだと知りながら。
なぜなら、俺の姿は10歳にもならない少女だから。
墓が並んでいる一画にオレンジの樹があった。
鮮やかな実が光っている。うっすらと降っていた雨が止んで、その樹の下で一人の老人が手を伸ばす。きれいな実を一つもいで、足元の墓に供えてくれる。
それは俺の墓だ。
老人は静かに微笑んで、俺の気配に振り返る。
皺のよった顔。白い髪とわずかに灰色がかってはいるけれど、それでも深い黒の瞳。
俺は胸が詰まる。シーン。今年も俺の墓にオレンジを置いてくれたんだ。
シーンは微笑み、近づく俺にそっと頭を下げる。
「あなたもどなたかの?」
「はい」
「去年もお会いしましたね」
「そうですね」
「大事な人ですか?」
「ええとても」
俺はあなたに会いに来ている。誰よりも大切なあなたに。
「それでは」
「はい」
シーンはゆっくりと俺の横を通り過ぎる。俺の姿には気づかない。俺の中身には気づかない。
俺がSUP/20032、スープであったのは遠い昔。それでも。それでも、俺は毎年ここに来る。奇跡を望んで。立ち去っていくシーンが、はっと気づいて俺の名前を呼んでくれる。たったそれだけのことを願って。それが絶対起こるはずのないことだと知りながら。
なぜなら、俺の姿は10歳にもならない少女だから。
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登録日 2016.10.03 22:52
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