『ドリーム・ウォーカー』8. パンドラの箱(3)アップ。
実は僕から目を逸らせた。目深に被った帽子の下で、あいまいな微笑が消えて厳しい顔になった。プルオーバーパーカーの腕を自分を抱くように引き寄せて、
「誰もわかってくれなかったボク。逃げて隠れたのにズタボロにされたボク。毎日どこかでボクが死んでる。だから叫ぶことにした。思いっきり。火事があるぞーって。ここでとんでもないことが起こってるぞーって」
実の顔が少し和らいだ。
「ほんのときどき、叫んだ声を聞きつけてくれる人がいる。そしたら、その人にも頼む。できたら、叫んでくれって」
実はまっすぐに前を見た。
怯まない顔だった。
タフな顔だった。
「おまえは、すごい奴だったんだ」
ぷふっ、と実は吹いた。
「誰もわかってくれなかったボク。逃げて隠れたのにズタボロにされたボク。毎日どこかでボクが死んでる。だから叫ぶことにした。思いっきり。火事があるぞーって。ここでとんでもないことが起こってるぞーって」
実の顔が少し和らいだ。
「ほんのときどき、叫んだ声を聞きつけてくれる人がいる。そしたら、その人にも頼む。できたら、叫んでくれって」
実はまっすぐに前を見た。
怯まない顔だった。
タフな顔だった。
「おまえは、すごい奴だったんだ」
ぷふっ、と実は吹いた。
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登録日 2017.06.23 20:16
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