有頂天のA君

「この世界には無数の事柄があって、そのどれもこれもに、計り知れない奥深さがあるんだなあ」

 上記は、私が年齢を重ねるにつれ身に染みて思うようになった事の一つです。と言っても特別なことなど一切なく、同種の想いを抱いている人は無数にいるのでしょう。しかしその反面、「私はある事柄について究極的な本質を知っている」と公言する人が多々いるのも事実です。もちろん全員ではないのでしょうが、少なくとも私が出会ったそのような人達には、共通項がありましたね。

 たとえばここに、徒競走が苦手なA君がいたとします。A君は小学一年生の運動会から高校二年生の体育祭まで、徒競走でビリになった事しかありません。しかし諦め切っていたA君は、特別な対策をただの一度もしたことはありませんでした。
 そうして迎えた、高校三年生の体育祭。A君より徒競走の苦手な生徒がたまたまいた事もあり、A君は人生で初めてビリではない順位になりました。有頂天になったA君は、こう呟くのです。「俺はとうとう、短距離ダッシュのコツを掴んだようだな」

 続きは次回に。
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登録日 2022.05.28 06:07

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