半ば社会悪

 解説の道筋が、しばし遠回りになります。ご了承ください。

 心は、日々の行いによってのみ成長します。然るに心が成長するにつれ、「知っているだけで偉い」の誤謬を理解できるようになります。その心を持つ編集者にとって、出版業は半ば社会悪に感じられます。いかに心血を注ごうと出版社が世に送り出すのは、知識を詰め込んだ本でしかないからです。したがって更に高潔な志を持つようになりますが、そういう人であるほど「私は恥ずかしい仕事をしている」と心の深い場所で考えるようになってしまう。かつて日本にはそんな編集者が、沢山いたんですね。

 しかし時代が変わり、「売れさえすれば良い」と考える若手編集者や新人小説家が増えてきました。その考えのもと書かれた応募小説へ、同じ考えを持つ若手編集者が高評価をくだそうとしているのを見て、編集長がこう諭すのです。

『私は恥ずかしい仕事をしている、と小説家は考えていなければならない』

 続きは次回に。
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登録日 2022.05.14 06:23

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