『ラズーン』第二部 1.忘却の湖の伝説(1)
ざぶん、と重い水音が響いて、ユーノは振り向いた。
光にきらきらと水面を輝かせている湖の岸で、一人の少女が深く頭を垂れて祈っている。表情は見えないが、俯いた沈鬱な気配から何か胸に想いを抱えているようだ。
その側で、もう一人別の少女が胸の前に抱いていた白い布包みをゆっくりと差し上げた。太陽に顔を向けて目を伏せる、頬に水飛沫とは違うものが伝い落ちてどきりとする。小さく呟き、やがてきつく唇を結んだと思うと、頭上まで両手を差し上げて、一気に布包みを湖の方へ放り投げる。
ざぶんっ……。
音に俯いていた少女も顔を上げ、湖の彼方を見た。涙に濡れた頬を晒しながら、もう一人の少女も湖を見つめる。
厳しく寂しい顔だった。切なく潤んだ瞳だった。
けれど波打つ布が藍色の湖の奥深くに消えて行く頃には、二人とももう泣いてはいなかった。静かに身を翻して湖の畔から立ち去っていく。
(あんな風に)
ユーノもまた、自分の全てを捨てるつもりだった、今までの自分だったなら。
光にきらきらと水面を輝かせている湖の岸で、一人の少女が深く頭を垂れて祈っている。表情は見えないが、俯いた沈鬱な気配から何か胸に想いを抱えているようだ。
その側で、もう一人別の少女が胸の前に抱いていた白い布包みをゆっくりと差し上げた。太陽に顔を向けて目を伏せる、頬に水飛沫とは違うものが伝い落ちてどきりとする。小さく呟き、やがてきつく唇を結んだと思うと、頭上まで両手を差し上げて、一気に布包みを湖の方へ放り投げる。
ざぶんっ……。
音に俯いていた少女も顔を上げ、湖の彼方を見た。涙に濡れた頬を晒しながら、もう一人の少女も湖を見つめる。
厳しく寂しい顔だった。切なく潤んだ瞳だった。
けれど波打つ布が藍色の湖の奥深くに消えて行く頃には、二人とももう泣いてはいなかった。静かに身を翻して湖の畔から立ち去っていく。
(あんな風に)
ユーノもまた、自分の全てを捨てるつもりだった、今までの自分だったなら。
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登録日 2017.06.09 17:40
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